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岡慎之助が種目別の鉄棒で金メダルを獲得。団体、個人総合に次ぐ3つ目の金メダルだ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
岡慎之助が種目別の鉄棒で金メダルを獲得。団体、個人総合に次ぐ3つ目の金メダルだ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

同点なのになんで金?パリ五輪体操で52年ぶりの鉄棒、団体、個人総合「3冠」達成の“超新星”岡慎之助は“キング”内村航平氏を超えることができるのか?

 前出の畠田氏は「8人中6人に大減点につながるミスが出るなんて過去の五輪で記憶がありません。ミスをしなかった岡選手のためのパリ五輪でした」と総括した。
 同点だった岡とバラハスの明暗を分けたEスコアの差は着地にあったという。
「バラハスの難易度の高い構成は、減点のリスクと背中合わせ。伸身トカチェフで膝が曲がり、車輪でも反りがあって、そこは減点対象でした。そして一番の差は着地です。ほんの少しですが後ろに動きました。対する岡は綺麗に止まっています。ここに0.1差があるんです。着地の差が、同スコアながら金と銀の色を分けたのだと思います」
 畠田氏はむしろ張が最大の強敵だと考えていた。
「本人に聞いてみなければわかりませんが、張の着地の失敗はイメージでは止まっているのに体が前へいってしまったのかもしれません。こういう現象は疲れが原因で起きることがあります。手を着きあれだけ乱れると着地だけで1点近くは減点があったでしょう。もしその減点がなければ岡選手を上回っていたことになります」
 なぜ岡はパーフェクトな着地も含めたノーミスの演技ができたのか。
 岡自身は「準備ですかね。怪我をしてからパリへの準備はしっかりとやってきていたので、それが今回につながったのかなと思っています」と自己分析した。
 畠田氏は、約1時間前に行われた平行棒で獲得した銅メダルがプラス材料になったと見ている。
「平行棒でいい演技をして銅メダルを獲ったことが鉄棒のノーミスにつながったと思います。これまではミスの多かった平行棒の着地がピタリと止まりました。平行棒で成功した着地のイメージや感覚は、鉄棒の着地にも、そのままプラス効果を及ぼすんです」
 世界選手権の出場経験もない20歳の岡が初出場の五輪で52年間、閉ざされていた日本体操界の歴史の扉を押し開けた。
 ひとつの大会での3つの金メダルの獲得は、1972年のミュンヘン五輪で、加藤氏が団体、個人総合、平行棒の3種目で獲得して以来となる。
 過去最多は1968年メキシコ五輪で中山彰規氏が団体、つり輪、平行棒、鉄棒で獲得した4つ。“3冠”は1960年ローマ五輪の小野喬氏の団体、跳馬、鉄棒、1964年東京五輪の遠藤幸雄氏の団体、個人総合、平行棒、メキシコ五輪の加藤澤男氏の団体、個人総合、ゆか、そして同氏のミュンヘン五輪での連続3冠しかないという快挙なのだ。
 あの内村氏も、金は2012年ロンドン五輪の個人総合、2016年リオ五輪の団体、個人総合の2大会合わせて3つ。ただ内村氏は、ロンドン、リオ五輪で、個人総合を連覇し、世界選手権を含めると前人未到の8連覇を達成している。
 岡が4年後のロス五輪へ向けての決意を込めて言う。
「もっと強くなって(内村)航平さんがやってきたように、常に勝ち続けるような選手になりたい」
 岡に内村氏を超える可能性はあるのだろうか。

 

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