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キャプテンの石川が1点の重みについて切実に語った(写真:エンリコ/アフロスポーツ)
キャプテンの石川が1点の重みについて切実に語った(写真:エンリコ/アフロスポーツ)

「明日もう一度戦えば勝てるかもしれないが駆け引きと勝負強さが不足」なぜパリ五輪男子バレーで日本はイタリア戦で計4度あった“あと1点の壁”に泣いたのか?

 パリ五輪バレーボール男子の準々決勝が5日、パリ南アリーナで行われ、世界ランキング6位の日本が同2位のイタリアに2-3で大逆転負けを喫し、1976年のモントリオール五輪以来、48年ぶりとなるベスト4進出を逃した。2セットを連取した日本は、第3セットと最終第5セットで計4度のマッチポイントを迎えながらも、あと1点が奪えずに涙した。

 ジャネッリの老獪なトスワークと1メートルの工夫

 あと1点があまりにも遠かった。
 第3セットでは24-21、最終第5セットでは15-14と日本が4度のマッチポイントを迎えながら、そのたびにイタリアの逆襲を浴びた。前者は4連続で、後者では3連続で得点を奪われ、2セットを連取する展開から悪夢の逆転負けを喫した。
 パリ五輪が終わった直後のフラッシュインタビュー。キャプテンの石川祐希(28、ペルージャ)は涙で声を詰まらせながら自分を責めた。
「勝つチャンスを迎えながらも、最後、僕にたくさん集めてくれたなかで1本を決められずに、このような結果になってしまった。キャプテンとしても、エースの1人としても力不足だったと感じているし、非常に責任を感じています」
 第3セットは24-22から相手のワンタッチを狙った石川の放ったスパイクが外れ、日本ベンチがビデオ判定を要求するチャレンジを試みるも失敗。デュースにもちこまれた末に25-27で落とした。最終セットでは15-15から放った渾身のスパイクがブロックされ、逆にマッチポイントを握られて15-17で奪われた。
 ただ、1次リーグでは精彩を欠いた石川が、両チームを含めて最多の32得点を決める復活を果たしたからこそ、セッターの関田誠大(30、ジェイテクト)もここ一番でエースへトスをあげ続けた。だからこそ、仲間の信頼に得点で、何よりも勝利で応えられなかった自分へのふがいなさを込めて、石川は自らを責め続けた。
「メダルを取るとずっと言い続け、みんなで作ってきた集大成がこの結果なので、それを強く受け止めなければいけない。本当に最高のチームだったと思うし、みんなは本当にいいプレーをしていた。そのみんなに申し訳ないという気持ちと、ここまでついてきてくれてありがとう、という感謝の気持ちでいっぱいです」
 直近である2022年の世界選手権を制し、金メダル候補としてパリ五輪に臨むイタリアとの大一番で、日本は理想的な試合運びを見せた。第1セットは14-12から6連続得点を奪ってペースを握り、最終的には25-20で制した。第2セットでは21-23から怒涛の4連続得点をあげる逆転劇で25-23と連取に成功した。
 なぜサーブレシーブで日本が優位に立ち、石川が今大会4試合目にして覚醒できたのか。元日本代表で現在は姫路獨協大学の女子バレー部コーチを務める山本隆弘氏(46)は、こう分析した。
「高橋と山本が一歩ずつポジションを中にとり、石川は正面のボールだけに対処すればいいという態勢を取った。イタリアは石川を狙ってきたが、2人のカバーもあってサーブレシーブが安定した。攻撃に専念できた石川の気持ちに余裕が生まれ、本来のパフォーマンスを発揮できた。石川を1人にしない、という周囲の思いも伝わっていたと思う」
 フィリップ・ブラン監督(64)の戦略とそれに応えた高橋藍(22、サントリーサンバーズ大阪)とリベロの山本智大(29、大阪ブルテオン)の守備力があった。
 しかし、絶体絶命の状況で第3セットを迎えたイタリアが息を吹き返す。流れを変えたのは、2016年のリオ五輪で銀メダル獲得した唯一のメンバーでキャプテンを務める司令塔シモーネ・ジャネッリ(27、ペルージャ)の「トスワークだ」と山本氏は指摘する。

 

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