なぜ高校1年の開心那はパリ五輪女子スケボーの東京に続く銀メダルに「東京よりうれしい」と発言したのか?
パリ五輪スケートボードの女子パーク決勝が6日(日本時間7日)、コンコルド広場で行われ、15歳の開心那(ひらき・ここな、WHYDAH GROUP)が東京五輪に続く銀メダルを獲得した。予選を1位で通過した世界ランキング1位の開は、3位に後退して迎えた最後の3本目のトリックで、この日の自己最高となる92.63点をマーク。優勝したアリサ・トルー(14、豪州)にわずか0.55点及ばなかったものの、逆転で手にした銀メダルに「東京よりもうれしい」と笑顔を見せた。
女子では珍しい難技「ノーズグラインド」を開始5秒で成功
メダルの色は東京五輪の銀色と変わらない。それでも価値がまったく違う。表彰式後のフラッシュインタビュー。開が思いの丈を込めた。
「また銀メダルで金メダルに一歩届かず、悔しい気持ちもあります。でも、東京五輪では最後のランでミスして、出したいものを出し切れなかった。今回は自分のすべてを出し切った結果だったのですごくうれしい。東京よりもうれしいです」
世界ランキング1位の実力通りに、予選を1位で通過した。3本を滑る決勝の1本目でも、8人のうちただ一人、90点を超える91.98点をマーク。しかし、最後の3本目でライバルたちが一世一代のトリックを成功させてきた。
まずは世界ランキング2位のトルーが、多彩なエアを次々に成功させて93.18点のベストスコアを叩き出して1位に躍り出る。さらに東京五輪銅メダリストのスカイ・ブラウン(16、英国)も92.31点をマークして2位に浮上した。
最後に登場した開は、この時点で銅メダルを確定させていた。しかし、予選で着た黒いシャツを、決勝では勝負服の白いそれに変えた15歳は覚悟を決めていた。フラッシュインタビューではこんな言葉も紡いでいる。
「メダルを取れることはもう決まっていましたけど、自分の一番出したかったランをミスしていたので、すごく緊張して最後のランを滑りました」
悔しさとともに、開の脳裏に刻まれていたのは決勝の2本目。会心のトリックを成功させ続けながら、最後の大技、空中でデッキ(板)を蹴って1回転させる「キックフリップインディー」で失敗。79.79点にとどまっていた。
パークの競技方法は予選の得点は持ち越されず、決勝では各選手が臨む3本のランのうち、もっとも高い得点が採用されて競い合う。パリ五輪の女子パークのメダリストが決まる、まさに1発勝負といっていい45秒間のランを開がロールインさせた。
開の代名詞となってひさしい、前方の車軸でコースの縁に乗りながら滑る、女子では珍しい難技「ノーズグラインド」を開始5秒で成功させる。東京五輪より身長が22cmも伸びて170cmになり、長い手足でスタイリッシュなトリックを魅せる開が、お椀型のコースを自由に滑りながら多彩な技を次々と繰り出していく。
迎えたラスト6秒。開は迷わずに「キックフリップインディー」に挑んだ。今度は完璧な着地に成功。すべてのトリックをフルメイクで終えた瞬間に、実は開は自ら禁を破っている。フラッシュインタビューの最後にこう打ち明けた。
「本当に安心したし、嬉しかったし、いままでガッツポーズをそんなにしたことがないんですけど、それが出ちゃうくらい本当にうれしかったです」
コンコルド広場の上に広がるパリの青空へ向けて、両腕を大きく突き上げた。ガッツポーズを繰り返すこと、実に3度。無意識のうちに全身で喜びを表現する開の姿に、ともに決勝を戦った7人の選手たちが笑顔で拍手を送っている。
果たして、発表されたジャッジの結果は92.63点。予選を通じてこの日の自己最高をマークし、ブラウンを抜いて2位に浮上した開だったが、日本人を母にもつ岐阜県生まれのトルーにはわずかに0.55点届かなかった。