40ぶりにパリ五輪レスリングのグレコで歴史的な金!「防御技術が研ぎ澄まされていた」文田健一郎は銀メダルの東京五輪から何がどう進化したのか?
パリ五輪の男子レスリングのグレコローマンスタイル60キロ級の決勝が6日、シャンドマルス・アリーナで行われ、東京五輪銀メダリストの文田健一郎(28、ミキハウス)が曹利国(25、中国)を4―1で下して初の金メダルを獲得した。日本勢のグレコローマンでは1984年ロサンゼルス五輪の宮原厚次氏以来、40年ぶりの快挙となった。
悔し涙を流した東京五輪からの変化と継続
パリ五輪の表彰式で、グレコローマン60キロ級、金メダリストとして名前を呼ばれた文田は両膝を少し曲げてから大きくジャンプして表彰台に上がり、両腕を掲げた。金メダルを首にかけられたあと、じっと見つめて目を閉じメダルにキッスした。
五輪代表チームに合流する直前、Xへ「3年前の忘れ物を獲りにいきます」と投稿していた通りに悲願の金メダルを手に入れた。
「3年前の決勝のことをすごく思い出します。あれから本当に紆余曲折があって、経験したことがないくらい苦しいこともあって、同じくらい楽しいこともあって、トータルでは楽しいことが上回っていました」
決勝戦の直後、銀メダルに終わった東京五輪からの3年間を振り返った文田は、悔し涙にくれたあの時と違い、柔らかな笑顔で勝利者インタビューに答えた。
東京からパリへ。
文田は変化と継続を組み合わせたレスリングで頂点に立った。
目覚ましい進化を遂げたのは、防御する力の向上だ。
ソウル五輪フリースタイル48キロ級金メダリストの小林孝至さんは、「グラウンドの防御が素晴らしかった。今回、グラウンドでの失点がほとんどありませんでした」と、失点の内容が変わったことに注目した。
グレコローマンで、大きく失点するきっかけとして、投げ技、もしくはグラウンドでの連続技によるものが多い。3年前までの文田は、得意の投げ技で大量得点するのがパターンだった。ところが東京五輪では、その投げ技をことごとく防がれ、付随してグラウンドでの防御も不完全なものになってしまった。この3年の間に、大好きだった投げ技を一時封印してまで防御力向上に務めてきた。
決勝で文田は開始から右手で相手の左手首を押さえながら積極的に前に出て曹利国のスタミナを削った。開始1分19秒に曹利国の消極性からパッシブで1ポイントを先取した。
パッシブのペナルティで相手がうつ伏せになった状態から再スタートすると、文田はローリングを決めて、さらに2ポイントを追加した。3-0で第2ピリオドへ突入し、残り2分でパッシブを取られたが、そのペナルティの大ピンチをしのぎきった。最後は逆転を狙って曹利国が仕掛けてくるが、文田はリードを守り切った。
小林氏は3年前との違いをこう指摘した。
「防御の感覚が研ぎ澄まされた部分が3年前と大きく違います。素晴らしかったです。さすがに耐えきれないかなという場面でも守り切っていました。その感覚のおかげでしょう、決勝で横くずしから2点をとったときも時間がかかっても焦ることなく返しました」