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女子レスリング53キロ級の藤波が初出場の五輪で圧倒的な強さを示して金メダルを獲得した(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
女子レスリング53キロ級の藤波が初出場の五輪で圧倒的な強さを示して金メダルを獲得した(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

167連勝でパリ五輪金メダルの藤波朱理は“霊長類最強女子”を超えることができるのか…「簡単ではないがまだまだ向上できる」

 パリ五輪女子レスリング53キロ級の決勝が8日、シャン・ド・マルス・アリーナで行われ、“新霊長類最強レスラー”の藤波朱理(20、日体大)が世界ランキング1位のジェペス・グスマン(23、エクアドル)に10-0のテクニカルスペリオリティー勝ちで金メダルを獲得した。藤波は中学2年時から続く公式戦連勝記録を「137」に伸ばした。まだ20歳の藤浪は、五輪3連覇を果たした吉田沙保里氏、同4連覇の伊調馨氏を超えることができるのか。

 

「もう最高。オリンピック最高。レスリング最高。やってきてよかったです」
 藤波は高まる気持ちのまま、思いついた幸せを表現していた。
 パリ五輪の試合はすべて圧勝だった。1回戦はパリッシュ(米国)に6-0でフォール勝ち、準々決勝はバチュヤグ(モンゴル)に8-2でフォール勝ち、準決勝はホウセンギョク(中国)に10-0でテクニカルスペリオリティー勝ちを収めた。
 すべての試合を通して、得意の相手の足もとへと入る低いタックル、ローシングルが冴え渡り、続けてアンクルホールドを仕掛けて連続得点につなげるという得意パターンで勝ちを重ねた。
 決勝戦も開始44秒で低空姿勢から相手の左首にタックルを決め先にポイントを取った。さらに攻め続けて片足タックルを3回決めてポイントを積み重ねた。
 ジェペスグスマンは、昨年の世界選手権で試合の序盤に先に5点を奪われ危ない思いをさせられた相手だった。
 試合後に「毎回(ジェペスグスマンのことを)考えて練習をしてきました」と明かしたが、あらゆるパターンを頭と体に叩き込んでいた。
 第2ピリオドにジェペスグスマンがポイントを挽回するため、前へ出てきたところに、今度は藤波がカウンターで左足を取った。8-0とリードを広げて、フィニッシュは、がぶった体勢からのアンクルホールド。2分23秒を残してのテクニカルスペリオリティー勝ちだった。
 なぜこれほど圧倒的なスコアで優勝まで駆け上がることができたのか。ソウル五輪フリースタイル48キロ級金メダリストの小林孝至氏は、相手の片腕を両手でとる「ツーオンワン」という技を左右、交互に出せる器用さを理由のひとつにあげた。
「ツーオンワンは、かけられると外すのに必死になり攻めることができなくなります。攻め手が完全に防がれた状態になるので、足もとが軽くなりがちです。藤波選手はそこにローシングル、低い位置へ入るタックルをして得点します。ローシングルは入って決まれば大きいですが、通常だと低い位置へ入る時間の分だけ相手に防ぐ余裕を与えることになります。ところが相手の右腕だろうと左腕だろうと、ツーオンワンをスイッチするようにかけ続けることで余裕をなくしています」
 本来の「ツーオンワン」は、相手の片腕の手首と上腕をとり腕全体をキャッチ、自分の胸にぴったりと強い力で引きつけることで身動きをとれなくするもの。そういう意味では藤波のそれは未完成なところが残っているが、左腕から右腕へとスイッチし続ける「ツーオンワン」という、とても珍しい組み手によって、相手に防御を困難にさせている。結果、相手は攻め手を失い、上半身の防御一辺倒となるためタックルに対して無防備となるのだ。

 

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