明日パリ五輪決勝!ドイツに快勝の卓球女子団体は“最強”中国を倒す歴史的勝利で金メダルを獲得できるのか?
パリ五輪卓球の女子団体準決勝が8日(日本時間9日)にパリ南アリーナで行われ、世界ランキング2位の日本が同5位のドイツを3-1で破り、銀メダル以上を確定させた。第1試合のダブルスを早田ひな(24、日本生命)と平野美宇(24、木下グループ)のペアで制した日本は、エースポジション対決の第2試合で張本美和(16、木下グループ)が敗れるも、第3試合で平野、第4試合では張本がともにストレート勝ちして2大会連続3度目の決勝進出を決めた。悲願の金メダル獲得をかけて、10日の決勝で5連覇を狙う中国と対戦する。
張本の表ソフトラバーへの対策
勝利とともに決勝進出を決めた直後に、張本はタオルで顔を覆った。汗をぬぐうためではない。団体戦のエースポジションを任されている16歳は泣いていた。
「いまは本当にホッとしている。そのひと言だけです」
フラッシュインタビューでも涙ぐんでいた張本は、さらにこう続けた。
「自分の1試合目はすべて忘れて、ゼロからこの試合に臨む気持ちでした。先輩方にもたくさん声をかけてもらったので、思い切りプレーすることができました」
ダブルスを制した第1試合に続いて、両チームのエースポジションの選手が対峙する第2試合に臨んだ。しかし、主力選手の怪我もあり、団体でリザーブから急きょ昇格したパリ五輪で驚異的な成長を遂げているアネット・カウフマン(18)に圧倒され続け、ひとつのゲームも奪えないままストレートで屈した。
第3試合で平野がストレート勝ちを収め、ドイツへ傾きかけた流れを引き戻して迎えた第4試合。悲願の金メダル獲得への期待。同じ試合で2度は負けられない責任感。前日の男子団体準決勝で敗れ、涙を流した兄の智和(21、智和企画)の無念さ。さまざまな要因が絡み合い、張本に大きなプレッシャーを与えていた。
さらにペンホルダーグリップを駆使する、対戦相手のシャン・シャオナ(41)の多彩なテクニックに翻弄されたのか。第1ゲームで一時は2-7とリードを許した。
それでも、現役時代は日本代表のエースとして活躍し、1992年のバルセロナ五輪から4大会連続で五輪に出場した松下浩二氏(56)は、第1ゲームの途中からは「安心して見ていられた」と張本の順応力の高さを称賛した。
「シャオナ選手のラケットには表面に粒がついた表ソフトラバーが使われていて、手元でボールがすごく変化してくる。最初はちょっと相手のボールに合わなかった場面もあったが、日本には同じようなラバーを使っている選手が多いので、対策もしっかりと講じられている。具体的には相手のバックにまず長いサービスを出す。これだと相手はなかなか強いボールを返せないので、つないでくるボールに対して逆に強打を仕掛けていく。この戦術が第1ゲーム途中から機能した結果として一方的な試合になった」
第1ゲームは2-7から8連続ポイントを奪う逆転劇で、最終的に11-8で制した。第2ゲームでは6-5から5連続ポイントで連取すると、第3ゲームでは11-0とラブゲームを達成。第2セット途中から怒涛の連続16ポイントを奪っての圧勝に、松下氏は「このレベルの大会では、なかなか見られない」と舌をまいた。
「相手にしてみれば何をしても張本選手に打ち返されるし、リスクを背負って強打しても入らない展開になっていた。張本選手にはこれから、シャオナ戦のように絶対に勝たなければいけない試合が数多く待っている。その意味でも、ひとつの試合中にメンタルをしっかりとセルフコントロールして、途中からは落ち着いた状態で実力をフルに発揮できて勝ったのは、貴重な経験を積めた点でも非常に大きい。さらに個人的な本音をいえば、早田選手とカウフマン選手が対戦する最後の第5試合には、もつれ込んでほしくないと思っていた。左手が万全な状態の早田選手ならばまず問題はない相手だが、まだ若干の不安要素があるなかで、張本選手で終わらせてほしいと思っていた」