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パリ五輪から新種目の採用されたブレイキンの初代金メダリストは日本のAMI(湯浅亜実)(写真:松尾/アフロスポーツ)
パリ五輪から新種目の採用されたブレイキンの初代金メダリストは日本のAMI(湯浅亜実)(写真:松尾/アフロスポーツ)

「おそらくAMIが最初で最後の金メダリストとして歴史に名を刻むことになる」パリ五輪ブレイキンで“初代女王”の快挙も仏紙が注目報道…こんなに面白いのにもう五輪から消滅?

 パリ五輪の新競技、ブレイキンの女子が9日(日本時間10日)にコンコルド広場で行われ、決勝で湯浅亜実(ダンサー名・AMI、25)が3-0でリトアニアのドミニカ・バネビッチ(同・Nicka、17)を破り、栄えある初代金メダリストに輝いた。だが、2028年のロス五輪では米国が発祥の地であるにもかかわらず競技から外される方向で、フランスのスポーツ紙『L’EQUIPE』は「おそらくAMIは最初の最後の金メダリストとして歴史に名を刻むことになるだろう」との注目報道を行った。

 「決勝はもう楽しもうと思った」

 100年を超える五輪の歴史に「AMI」の3文字が刻まれた。
 コンコルド広場を舞台に行われたパリ五輪の唯一の新競技、ブレイキンの女子決勝。出場16選手が4組に分かれる1次リーグ、上位2人ずつが進む準々決勝、そして準決勝を勝ち抜いてきた湯浅とバネビッチによる最後のパフォーマンス。先攻を選んだバネビッチに湯浅がアンサーで応える順で、3ラウンドの勝負が終わった。
 MCによるマイクパフォーマンスが会場を盛り上げるなかで、観客の視線は電光掲示板へと注がれる。9人のジャッジが技術性、多様性、完成度、音楽性、独創性の5つの項目をそれぞれ20点満点で採点。トータルで湯浅が上回ったと判断したジャッジは赤色の、バネビッチの場合は青色のボタンを押していく。
 第1ラウンドは6-3で湯浅が制した。そして、接戦となった第2ラウンドも5-4で湯浅に軍配があがった瞬間に勝負が決した。最終的には第3ラウンドも5-4で制した湯浅が、ダンサー名の「AMI」とともに初代金メダリストに輝いた。
 もっとも、まばゆいスポットライトを浴びたヒロインは、フラッシュインタビューに応じてもまだ、自身が成し遂げた快挙にピンときていなかった。
「まだ実感できてないというか、本当だったら泣きたいくらいにうれしいはずなんですけど、いまはちょっとフワフワしている感じです」
 実は準決勝で一世一代の勝負を仕掛けていた。
 対戦相手のインディアデウィ・サルトジョー(18、オランダ)のパフォーマンスを目の当たりにして、決勝で繰り出す予定だったムーブを前倒しして披露すると決めた。そうしなければ、INDIAのダンサー名をもつ相手に負ける。2019年と2022年の世界選手権を制するなど、湯浅のなかで積み重ねられてきた豊富な経験が、土壇場でのプラン変更を即決させた。
 準決勝は3-6、6-3、8-1と2-1で制した。湯浅自身は詳細を明かしていないが、おそらくは第1ラウンドのミスを踏まえて上でプランを変更し、大差をつけた第3ラウンドにつなげたと見られる。フラッシュインタビューではこう続けた。
「なので、決勝はもう楽しもうと思って。対戦相手も同じチーム(Good Foot Crew)だし、とにかく思いきっていこうと」
 多様性や独創性も問われるブレイキンでは、ひとつの大会で同じムーブを繰り返せば減点の対象になる。決勝のムーブを新たに組み立てる必要もあったなかで、豊富な引き出しのなかからすぐに最適解を見つけ出して頂点に立った。
 ブレイキンの起源は1970年代のアメリカにある。ニューヨーク発祥のヒップホップ文化のなかから生まれた、自由度の高いダンスパフォーマンスを特徴としている。ダンスに合わせる音楽は、実は選手たちは事前に知らされていない。DJがその場で選択した音楽に、選手たちが即興で得意とするムーブで踊っていく。

 

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