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2走のサニブラウンから3走の桐生とバトンが渡る。アンカーまでの貯金が足りなかった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
2走のサニブラウンから3走の桐生とバトンが渡る。アンカーまでの貯金が足りなかった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

なぜパリ五輪で“リレー侍”は「0秒17」差でメダルに届かず5位に終わったのか…3走から4走にあったバトンミスと根本的な走力差

 パリ五輪陸上の男子400メートルリレーの決勝が9日、スタッド・ド・フランスで行われ、1走から順に坂井隆一郎(26、大阪ガス)サニブラウン・アブデル・ハキーム(25、東レ)、桐生祥秀(28、日本生命)、上山紘輝(25、住友電工)で挑んだ日本は、37秒78のシーズンベストを出したが5位に終わり、2大会ぶりのメダル獲得はならなかった。優勝はカナダで37秒50、2位は南アフリカ37秒57、3位は英国で37秒61。大本命の米国は1走から2走時のバトンミスで失格となった。なぜ“リレー侍”はメダルに手が届かなかったのか。

 

 世界の舞台で何度も〝歓喜〟を味わってきた日本の男子4×100mリレー。パリ五輪は予選を着順(3着以内)で通過できなかったが、全体4番目のタイム(38秒06)でファイナルに進出した。そして〝メダル〟を懸けた戦いが幕を開けた。
 日本は予選をサニブラウン→栁田大輝(東洋大)→桐生→上山というオーダーで出場した。しかし、決勝では1走に日本選手権100mを連覇した坂井を起用。エースのサニブラウンを2走に配置するオーダーで勝負に出た。
 NHKのスタジオ解説を務めた北京五輪の同種目銀メダリストの朝原宣治氏は予選のレースを、「無難なパトンパスで、1・2走が詰まった以外はまずまずでした」と振り返ると、決勝オーダーについては「坂井選手のスタートダッシュを期待しているのと、2走は一番長い距離を走れますので、サニブラウン選手が高いスピードで引っ張って桐生選手にバトンを渡す。そして上山選手がトップの方でバトンをもらうという戦略です」と言及した。
 決勝は朝原氏の言葉通りにレースが展開するも、厳しい現実が待っていた。
 3レーンの日本は1走・坂井が好スタートを切ると、2走・サニブラウンにスムーズにバトンが渡る。その間、1走・コールマンで抜け出した米国がバトンミス。トップ争いから脱落した。日本はサニブラウンに続いて、3走・桐生も鋭い走りを見せて、カナダとトップを競り合った。金メダルを期待したファンも多かったかもしれないが、アンカーの上山が3人にかわされて、5位でフィニッシュ。シーズンベストの37秒78(日本歴代5位タイ)をマークするも、2大会ぶり3度目のメダル獲得はならなかった。
 優勝はカナダで37秒50、2位は南アフリカで37秒57、3位は英国で37秒61。米国はバトンミスで「失格」となった。
 激闘を終えたリレー侍たちはメダルを手にできなかった悔しさを次々に語った。
「本気でメダルを狙っていましたし、いけるタイムと思っていたので、本当に悔しいです。個人の100m(予選落ち)のリベンジとして4×100mリレーに挑んだんですけど、そこでメダルを取れなかったのは自分の弱さかなと思います」(坂井)
「加速自体は悪くなかったんですけど、もっと思い切り出られたのかなと思います。そうすれば早い段階で桐生さんに渡せて、上山にもっと前で渡せたと思う。ぶっつけ本番でシーズンベストを出しましたけど、まだまだ足りない。自分もどこでもいけるようにもっとバトン練習をしなきゃいけないなと感じました」(サニブラウン)
「狙っていたメダルに届かず、悔しいですね。急遽、決勝はハキーム君に2走を任せるかたちになりました。いまは(ハキームに)頼っている部分があるので、ハキーム君と個人でも勝負できるようにならないといけないなと思います」(桐生)
「緊張はなかったですし、しっかり勝負しないといけないと思っていました。1番で持ってきてもらって、どんなリードでも守らないといけないのに抜かれてしまい、本当に悔しいです。まだまだ力が足りなかったと思います」(上山)
 サニブラウンは「もっと思い切り出られたのかな」と話したが、レース映像を観る限り、1・2走のバトンパスは良好だった。さらに2走・3走のバトンも素晴らしかった。しかし、3走・桐生から4走・上山のところで小さなミスがあった。上山が左手を伸ばすも、すぐにバトンが届かず、一瞬振り返ってバトンを受け取っているのだ。
 その後、上山は南アフリカのシンビネ(100m9秒82)、英国のヒューズ(100m9秒83)、イタリアのトルトゥ(100m9秒99、200m20秒10)に逆転された。200mをメインとする上山の自己ベストは100m10秒31(200m20秒26)。明確な走力差があっただけでなく、うまく加速に乗れなかった影響もあったかもしれない。

 

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