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1次リーグ敗退となったがHIRO10が見せた超絶ムーブに会場が騒然。採点を不服とするブーイングが起きた(写真・AP/アフロ)
1次リーグ敗退となったがHIRO10が見せた超絶ムーブに会場が騒然。採点を不服とするブーイングが起きた(写真・AP/アフロ)

「人生面白しれえ!」パリ五輪ブレイキンでHIRO10が超絶ムーブでも勝てず採点不満の会場が大ブーイング…予選落ちも名バトル

 パリ五輪の新競技ブレイキン男子の予選、決勝が10日、コンコルド広場で行われ、日本勢ではShigekix(半井重幸、22、第一生命)が4位に入賞したが話題を集めたのは1次リーグで敗退したHIRO10(大能寛飛、19)だ。銅メダルを獲得したVICTOR(30、米国)を相手に高難度の“超絶ムーブ”を繰り出した、0-2で敗れ、その採点を不服とする観客から大ブーイングが巻き起こった。記憶に刻まれる名バトルを見せたことで真夜中の検索ワードで「HIRO10」が1位になるほどだった。

 神ワザのワンハンドエルボーエアーを2度繰り出す

 コンコルド広場を埋めた観衆の目線が釘付けとなった。
 最終バトルを前にHIRO10の1次リーグ敗退が決まっていた。
 第1戦は、完成度の高い中国人のダンサーに0-2で敗れ、第2戦ではShigekixとの日本人対決が実現し、高難度のパワームーブで火花を散らす高レベルのバトルとなったが、2ラウンドともShigekix に軍配が上がっていた。
 ブレイキンは同じムーブを繰り返すと減点になるため、駆け引きがあるが、もう、この最終バトルにすべてを出し切ると決めていたのだろう。
 結果的に3位決定戦でShigekixを破り銅メダルを獲得することになる世界選手権金メダリストのVICTORを相手にHIRO10は、いきなりとっておきの超絶ムーブを繰り出す。片手の肘だけで回るという高難度のシグネチャームーブのワンハンドエルボーエアー。片腕で全身を跳ね上げて体ごと回転し、もう片方の腕で着地する難易度の高い技を「エアトラックス」というが、それを片肘だけでやってのけるというHIRO10の必殺技である。通常は一度入れるだけだが、なんと2度目のワンハンドエルボーエアーを4回転も続けて、会場を興奮の坩堝に落としていれた。
 だが、採点は1-8で、ジャッジには支持されなかった。
 さらに続く第2ラウンドで、今度は、逆立ち状態で頭だけで高速で回転するヘッドスピンを見せ、また観衆を魅了した。
 米国ブレイキン界の第一人者であるVICTORが思わず拍手を送るほどのダンスパフォーマンスだったが、これも3-6の採点。0-2で敗戦となると、会場は、なんと、その採点を不服とする大ブーイングに包まれたのだ。
 ブレイキンの採点は、9人のジャッジによって行われ、採点基準は「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」の5つ。試合中にタブレットの端末に打ち込まれていくが、やはり採点競技の特色として多分にジャッジの主観も入る。
 勝者のVICTORも大会前に米紙「USAトゥディ」の取材に答え「ベストを尽くし持っているものをすべて出し切り全力を尽くす。あとはジャッジ次第。審査は主観的なものだが、心配しないようにしている」という話をしていた。
 それでも記憶に刻まれる名バトルだったことは確かだ。
 パリ五輪のバトルを終えたHIRO10は泣いていた。日本からの応援団だけでなく会場全体が感動の涙に暮れた。
 HIRO10はインタビューに応じて涙の理由を説明した。
「なんかめちゃくちゃ楽しくて、ここまでやってこられたのもみなさんのおかげ…応援してくれているみんなのこととか、いろんな気持ちを考えて涙が止まらなくなった。最後は自分の大好きなブレイキンを見せられたのでうれしかったです」
 そして会場から採点を不服とするブーイングが起きていたことを伝えられると「ありがとうございました。うれしいです」と感謝の意を示した。
 19歳のHIRO10にとって初の五輪はどんなものだったのか。
「あっという間でなんか面白かったです。面白しれえ。人生面白れえっす」
 それは名ムーブにふさわしい名言だった。

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