その差はどこに?奇襲も空転…パリ五輪卓球女子団体で日本がまたしても“最強”中国の壁を崩せず銀メダルとなった理由とは?
パリ五輪卓球の女子団体決勝が10日にパリ南アリーナで行われ、悲願の初優勝を狙った世界ランキング2位の日本は同1位の中国に0-3で完敗し、2大会連続の銀メダルに終わった。第1試合のダブルスを、公式戦では初めて組む早田ひな(24、日本生命)と張本美和(16、木下グループ)ペアに変更する奇襲を仕掛けた、日本はフルゲームの末に2-3で落とし、続く第2試合で平野美宇(24、木下グループ)、第3試合では張本が敗れた。五輪で5連覇を達成した最強軍団・中国との差はどこにあるのか。
中国にプレッシャーをかけた早田&張本の組み合わせ
日本の奇襲が成功するまであと2ポイントだった。
団体戦の流れを大きく左右する第1試合のダブルス。準決勝までの3試合では早田と平野がペアを組み、すべてを制してきた日本は五輪4連覇中の中国との決勝で、早田と張本のペアに変えてきた。早田は試合後にこう語っている。
「張本選手と公式戦で組むのは、ほとんど初めてといっていいんですけど」
エースポジション対決となる第2試合のシングルス。世界ランキング1位の座に2年以上も君臨する女王、孫穎莎(23)が控える中国に対して、日本も昨年7月のWTTコンテンダーで孫に4-3で勝った平野をぶつける上での作戦だった。
現役時代は日本代表のエースとして活躍し、1992年のバルセロナ五輪から4大会連続で五輪に出場した松下浩二氏(56)は、決勝におけるダブルスのペア変更を「日本チームが取る作戦として、非常によかった」と振り返る。
「早田選手と平野選手のペアでずっと戦ってきて、最後の最後になってなかなか変えられない。その意味で日本が仕掛けた奇襲はちょっと意外だった。動揺したかどうかまではわからないけれども、中国にも確実にプレッシャーをかけられたと思う」
第2試合から逆算した日本の奇襲は大接戦を生んだ。
ゲームカウント2-2で迎えた最後の第5ゲームでは、4-5から怒涛の5連続ポイントを奪取。ダブルスの世界ランキング1位に君臨する陳夢(30)、王曼昱(25)ペアから勝利を奪うまで、あと2ポイントまで迫った。
しかし、ここから中国の逆襲がはじまる。5ポイントを奪い返して逆にマッチポイントを握り、最終的には12-10で制して第1試合を先取した。松下氏は「勝ちを意識したかもしれない」と早田・張本ペアの心理的な変化を指摘する。
「中国の選手がミスをする展開は期待できない。絶対に負けられないと、さらにギアをあげてくる中国ペアに対して、彼女たちの3倍くらいの強い気持ちで対抗しなければいけなかった。あと2ポイントを取れば勝てる、といった精神状態になってしまうと余計に相手に攻め込まれるし、結果として難しい展開になってしまった」
試合後のフラッシュインタビューで、早田もこう語っている。
「最後は先輩である自分が足を引っ張ってしまった。第1試合を取っていたらその後の試合展開も変わっていたはずですけど、あそこからが中国の強さだと思いました」