なぜパリ五輪男子マラソンで“無印”赤﨑暁がメダル争いを演じる6位入賞の走りができたのか…史上最難関コースと箱根駅伝から磨いた入念な“坂”対策
パリ五輪の男子マラソンが10日、パリ市庁舎前からアンバリッドの42.195キロコースで行われ、日本勢からは、赤﨑暁(26、九電工)が自己ベストを更新する2時間7分32秒で6位入賞を果たした。終盤までメダル争いを繰り広げる大健闘だった。また東京五輪6位入賞の大迫傑(33、Nike)が2時間9分25秒の13位、初出場の小山直城(28、Honda)は、2時間10分33秒で23位。金メダルは2時間6分26秒の五輪新記録を叩きだしたタミラト・トラ(32、エチオピア)だった。
自己ベストを五輪で更新
花の都に〝異変〟が起きていた。大集団からケネニサ・ベケレに続いて、エリウド・キプチョゲが脱落。パリ五輪の男子マラソンは前半から荒れた展開になったのだ。類まれなスピードを発揮してきたエチオピアの英雄は39位に沈み、五輪3連覇を目指した史上最強ランナーは途中棄権。〝怪物たち〟も手に負えなかったコースで九州男児が躍動する。
MGCで2位に食い込み、日本代表をつかんだ赤﨑だ。前半は集団のなかでレースを進めると、15㎞過ぎから続く長い上り坂も軽々と駆け抜ける。近くでレースを進めていた大迫傑(Nike)が「もしかしたらメダルを獲得するんじゃないか」と感じるほどの〝余裕度〟を見せていた。さたに中間点を越えた後の緩やかな下りでは、自ら先頭に立って、トップ集団を引っ張ったのだ。
25㎞は赤崎がトップで通過。下り坂があるとはいえ、この5㎞を14分25秒で走破した。そして27㎞過ぎまでトップを引き続けた。その後、T.トラ(エチオピア)が飛び出し、28㎞過ぎからの強烈な上り坂でトップ集団は崩壊。赤﨑は5位前後でレースを進めると、34㎞地点でトップから10秒差の2位集団に加わった。その後も懸命に駆け抜ける。メダルは目の前だった。
トラが2時間06分26秒の五輪新で爆走したレース。赤﨑は後続から来たE.ケーレス(英国)にかわされたが、最後は笑顔でゴールに飛び込んだ。難コースのパリ五輪で自己ベストを大きく更新する2時間07分32秒で6位入賞。メダルには32秒届かなかったが、素晴らしいレースを完結させた。
赤﨑はレース直後のインタービューで、「超楽しかった。最高です!」と興奮気味に話すと、「自己ベストよりも入賞できたことがうれしいです。今までで一番最高でした。楽しかったです。この3カ月間、練習で落ち込むこともありましたが、その成果をしっかり出すことができたのかなと思います。陸上での最大目標がマラソンで日本代表になることだったので、本当に最高の一日でした」と声を弾ませた。
他の日本勢は大迫が2時間09分25秒の13位、小山が2時間10分33秒の23位。ふたりとも終盤で順位を上げてフィニッシュした。
今大会は赤﨑の大躍進がとにかく驚異的だった。
金メダルに輝いたトラはオレゴン世界選手権でも優勝するなど、キャリア十分。自己ベストは2時間03分39秒で、10000mでも26分台のタイムを持っている。2位のB.アブディ(ベルギー)は2時間3分36秒の欧州記録保持者で東京五輪の銅メダリストだ。3位のB.キプルト(ケニア)の今年の東京マラソンを2時間02分16秒で制している。
一方、赤﨑は出場した81人のなかで2時間09分01秒の自己ベストは74番目。そんな選手が五輪の舞台でなぜ活躍できたのか。
まずは高低差が156mあり、「史上最難関」といわれていたコース対策をしっかりできたのが大きかった。