• HOME
  • 記事
  • 五輪スポーツ
  • 「誰が日本人の女子が投てきで金メダルを獲ると想像したか?」パリ五輪女子やり投げで北口榛花が金メダルの快挙…6投目が得意の“逆転のKITAGUCHI”が1投目にビッグスロー
パリ五輪の女子やり投げで北口榛花が金メダルを獲得。投てき競技では日本人女性として初の快挙だった(写真:松尾/アフロスポーツ)
パリ五輪の女子やり投げで北口榛花が金メダルを獲得。投てき競技では日本人女性として初の快挙だった(写真:松尾/アフロスポーツ)

「誰が日本人の女子が投てきで金メダルを獲ると想像したか?」パリ五輪女子やり投げで北口榛花が金メダルの快挙…6投目が得意の“逆転のKITAGUCHI”が1投目にビッグスロー

パリ五輪陸上の女子やり投げ決勝が10日、スタッド・ド・フランスで行われ、昨年の世界陸上を制した世界ランキング5位の北口榛花(26、JAL)が、1投目で今シーズン自己最長の65m80をマーク。最後まで他のライバル勢を寄せつけずに金メダルを獲得した。マラソン以外の陸上種目で、日本の女子選手が優勝するのは五輪史上で初めて。最終6投目でのビッグスローを連発し、“逆転のKITAGUCHI”の異名をとってきた北口は、なぜ1投目で歴史的な快挙を達成できたのか。

「1投目から絶対にいこうと思っていた」

 1投目で勝負を決めた北口が、日本陸上界の歴史を塗り替えた。
 いつもと同じように左側の助走コースから中よりへスピードをあげていき、投げる瞬間には体を反時計回りに捻りながら、こん身の力を込めて右腕を振る。時速89.30km、フィールドに対して38.46度の発射角度で放たれたやりは美しい放物線を描きながら、60mラインをはるかに超えて芝生へ突き刺さった。
 記録は北口にとって今シーズン最長となる65m80。昨夏の世界陸上ブダペスト大会を含めて、最後の6投目でビッグスローを成功させて優勝をもぎ取り、いつしか“逆転の北口”と呼ばれてきた北口は「競技人生のなかで、1投目で65mを投げたのはなかったんですけど……」とはにかみながら、ビッグスローを振り返っている。
「いつもは6投目までちょっとのんびりしていますけど、すごい選手ばかりなので、プレッシャーをかけられるように1投目から絶対にいこうと思っていました」
 作戦は鮮やかに成功した。いきなりのビッグスローが心理的な影響を与えたからか。ライバル勢がまったくといっていいほど記録を伸ばせない。最後の6投目。ただ一人、北口を抜く可能性を残していた2位のジョアネ・ファンダイク(26、南ア)が57.07mに終わった瞬間に、北口の金メダル獲得が決まった。
 米メディアの『Yahoo sports』は、北口の優勝を次のように伝えている。
「女子やり投げでは、日本の北口榛花が1投目でマークした65.80mで表彰台の中央に立った。昨夏のブダペストでは、北口は世界陸上の金メダルを獲得するために最後の投てきが必要だった。しかし、スタッド・ド・フランスでは今シーズン最高の投てきをいきなり成功させ、その後の金メダル争いにほとんど緊張感を与えなかった。もっとも、すでに金メダルを確定させていた彼女はランウェイの端で静かに跳びはね、ポーカーフェイスを保ちながら最後のウイニングスローに集中した」
 金メダルが決まった直後の6投目を含めて、ビッグスローを成功させたあとに抱き続けた思いを、北口は次のように明かしている。
「1投目であれだけ投げられたのならば、もうちょっと記録がほしかったと思っていました。パリの選手村に入ってからは、毎日のように夢のなかで70mを投げていたので、ちょっと悔しい部分もあって。今日は調子がいいとわかっていたし、本当に記録もほしかったので、最後の6投目までしっかりと投げました」
 最後はファウルで記録なしに終わった。時速92.00km、発射角度38.17度で放たれた5投目の64.73mが次に続く記録だった。正夢にならなかった直後に、北口は現実の世界に戻ってきたかのように、自らが成し遂げた偉業を実感した。

関連記事一覧