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性別騒動で揺れた台湾のリン・ユーチン(右)が20歳のポーランドのボクサーを寄せ付けず金メダルを獲得した(写真・AP/アフロ)
性別騒動で揺れた台湾のリン・ユーチン(右)が20歳のポーランドのボクサーを寄せ付けず金メダルを獲得した(写真・AP/アフロ)

「SNSから自分を切り離すことが重要だった」パリ五輪で誹謗中傷や「X」ポーズの侮辱的行為に苦しんだ性別騒動ボクサー台湾リンが金メダルを獲得

 IOCは、「全ての選手が大会の出場資格とエントリー規則に従っており、医学的規則にも全て適格である。選手のジェンダーと年齢はパスポートに基づく」との方針を明かした上で、「全ての人間に差別を受けることなくスポーツを行う権利がある」との声明を出し、3日にはトーマス・バッハ会長が会見を開いた。
「2人が女性であることに疑いはない」と明言。2人が、ジェンダーではなく出生時から女性としての戸籍を持っていることを改めて説明し「ヘイトスピーチは許されない」との態度を明確にした。
 それでも準決勝で敗れたエシュラ・ユルドゥズカフラマン(トルコ)がまた指で「X」を作る同じポーズを試合後のリング上で行った。きっとリンはその行為に心を痛めただろう。
 だが、この日、敗れたシェレメタは、侮辱的行動は起こさずにリンと健闘を称え合いリングを降りた。
「思ったようにはいかなかった。私は金メダルを手に入れるためにここに来たが成し遂げることはできなかった。でもまだ20歳。これで終わりじゃない。五輪の金メダルは私の夢です」
 シェレメタは、リンの性別問題に触れることなく潔く負けを認め前を向いた。
 メダルセレモニーには「X」ポーズの侮辱的な抗議を行っていたトルコ人ボクサーが、銅メダルを授与されるため、リンの隣にいた。だが、もうそういうパフォーマンスは行わず、リンと何やら会話を交わした後に抱擁。互いのメダルを称え、笑顔で肩を組み自撮り撮影を楽しんでいた。
 記者会見でリンは、賛否が飛び交うことになったSNSの情報を一切シャットアウトしていたことを明かした。
「大会中はエリートアスリートとしてSNSから自分を切り離すことが重要なんです。もちろん色んな雑音やニュース記事などの情報の一部をコーチを通じて聞いたこともありますが、あまり気にしていませんでした。私はIOCから招待されて大会に参加しました。私は大会に集中していました。他の問題についてはコーチに任せました」
 それが性別騒動に動揺することなくボクシング競技初の金メダルを台湾にもたらしたリンが貫いたことだった。
 女性として生まれ、女性として育ち、女性として五輪のリングに立った2人のボクサーが、金メダルという結果で世界に伝えたメッセージは、とても重たく意義のあるものだったのかもしれない。

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