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パリ五輪の女子やり投げで北口榛花が金メダルを獲得。投てき競技では日本人女性として初の快挙だった(写真:松尾/アフロスポーツ)
パリ五輪の女子やり投げで北口榛花が金メダルを獲得。投てき競技では日本人女性として初の快挙だった(写真:松尾/アフロスポーツ)

「誰が日本人の女子が投てきで金メダルを獲ると想像したか?」パリ五輪女子やり投げで北口榛花が金メダルの快挙…6投目が得意の“逆転のKITAGUCHI”が1投目にビッグスロー

 日本の五輪陸上競技では、2004年のアテネ大会の女子マラソンの野口みずき、ハンマー投げの室伏広治以来20年ぶりとなる金メダルで、日本の女子選手に限れば、マラソン種目以外では、初めての快挙だ。

 日大陸上部の指導者時代に北口を支え、日本陸連の投てき部長などを務めた小山裕三氏は、中継の解説の中で「誰が日本人の女子が投てきで金メダルを獲ると想像しましたか?」と心を込めて話した。五輪や世界陸上の結果を速報で伝える『World Athletics』は公式X(旧ツイッター)でこう伝えた。
<世界チャンピオンがオリンピックチャンピオンになる>
 もっとも、歴史を塗り替える偉業を達成するまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。世界陸上以降の日々を、北口は涙ながらにこう語る。
「世界チャンピオンですけど、今シーズンの序盤は動けなくなった時期もあって、ちょっといろいろとうまくいかなかった。世界ランキングも5位に下がるなど、不安な部分をたくさん抱えたまま臨んだパリ五輪だったので、気持ち的にはチャレンジャーでした。一時は誰が本当の味方なのかがわからなくなりましたけど、信じてくれる人たちがいなければこの舞台に立てなかったと思うし、だからこそすごく感謝しています」
 自分を信じてくれた一人で、北口がチェコに拠点を移した2019年から師事してきた同国出身のダヴィッド・セケラック氏から日の丸の国旗を受け取った北口は、それを身にまといながらフェンス越しに抱き合って泣いた。
 トレードマークのビッグスマイルが弾けたのは、勝者だけが許されるスタッド・ド・フランスの勝者の鐘を、跳びはねながら思い切り打ち鳴らしたとき。五輪の金メダリストになった実感を込めながら、北口はこう語っている。
「私自身は何もしゃべれなかったんですけど、コーチは『ハルカが世界で一番だ』と言ってくれてすごくうれしかった。いまは何ていうか、うれしいだけじゃ足りないぐらいで、なんか本当に言葉にできないくらい。いまだに実感がわかないです」
 表彰台の真ん中に立ち、金メダルを授与された表彰式。そして、センターポールに掲揚される日の丸を見つめ、流れてきた「君が代」を聴きながら北口はまた泣いた。
 もっとも、胸中には新たな思いが頭をもたげてきていた。首からさげられた金メダルを「すごく大事なものをもらった気持ちで、何回も見ちゃいます」と笑顔で見つめながら、北口は次なる目標をすでに思い描いていた。
「オリンピックで世界一になったら、燃え尽きちゃうかもしれないと思っていたんですけど。いざ終わった後にちょっぴり悔しさも残る金メダルだったし、また頑張ろうと思えるような、まだまだやり投げを極めたいと思えるような大会でした」
 自己ベストで日本記録もある67m38の更新へ。そして、世界のやり投げ史上で5人しか到達していない70m超えの真のビッグスローへ。モチベーションをさらに膨らませた新女王は、パリ五輪後も開催される陸上界最高峰の戦い、ダイヤモンドリーグをすべて戦い終えた9月中旬に、価値ある金メダルとともに凱旋帰国する。

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