「火の通っていない生肉まで出た」パリ五輪で最悪の評判だった選手村の食事をどう総括すべきか…チョコレートマフィンだけは絶品だった説も
その中で、フランスのトゥール大学にある欧州食文化史研究所の歴史家ロイック・ビエンナシス氏は、こんな見解を紹介している。
「五輪であれ、サッカーのW杯であれ、各国はこのようなイベントを何かをアピールするためのツールとして捉えている。フランス料理の宣伝は当然のこと、彼らはフランスでは持続可能な側面も考慮できることを示したかったのだ」
それらの目論見は完全に裏目に出た。
しかも、本質的に肉料理を軸としたフランス料理と植物由来の持続可能性は相反するもの。同氏は「フランス料理にはたくさんの肉が使われているので、環境面との間に緊張関係があるのだ」と説明した。
英BBCも「パリ五輪では植物由来の食品の提供量を倍増させることを誓った。しかしスポーツの卓越性と並んで地球の健康を優先させることは、さまざまな利害のバランスを取ることを意味するものだった」と、様々な課題が浮き彫りになったことを伝えた。五輪前からフランス国内では、食に関する激しい対立があり農家側からは、フランスの生産物を食べるべきだとの抗議があり、環境運動家は温室効果ガスの排出量を減らすようするべきと訴えていた。パリ五輪では、その論争を融和しようと試みたが、アスリートには響かなかったのが現実だ。
パリ五輪の選手村で出された温室効果ガスの排出削減に効果のある食事は、伝統的なフランス料理だけでなく、最高のパフォーマンスを追求するオリンピアンの食事メニューとしては、相性が悪かったのである。
だが、すべての食事が酷かったわけではない。米「USAトゥデイ」によると、チェコレートマフィンが好評で、ノルウェーの競泳代表のヘンリック・クリスチャンセンが、TikTokに投稿して紹介したところ何百万回も再生され、彼は「マフィンマン」と呼ばれるようになった。またバイルズはパン・オ・ショコラ(フランス語でチョコレートクロワッサンの呼称)を気に入っている様子をTiktokに投稿している。
そして最後に付け加えておきたいことがある。
選手村の食事を請け負った「ソデクソ・ライブ!」社の株価は、パリ五輪の開幕前に急上昇し、開幕後もあまり下落していないのである。