「ひどいのは審判だ!」パリ五輪で一転二転した体操女子種目別ゆかの銅メダルを巡る法廷闘争の“泥試合”はどうなるの…巻き込まれた選手に誹謗中傷問題も発生
パリ五輪は閉幕したが、今なおくすぶっている大問題がある。体操女子種目別ゆかの銅メダルを巡る訴訟騒ぎだ。当初、銅メダルはルーマニアのアナ・バルボス(18)が13.700点で獲得したが、米国チームの難易度判定見直し要求が認められ、13.666点で5位だったジョーダン・チャイルズ(23)の点数が13.766点となり銅メダルに繰り上がった。だがルーマニア側がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に採点の変更は無効だと訴えて提訴。CASは、その訴えを認め、IOCは10日、その裁定を受け入れてバルボスを銅メダルとした。すると今度は11日に米国側がCASに控訴。問題が泥沼化している。
CASは米国の抗議が規定の1分を4秒過ぎていたとの理由で無効裁定
パリ五輪が閉幕したが、未だに行方がどうなるかわからないメダルがある。体操女子の種目別ゆかの銅メダルだ。
5日に行われた種目別のゆかは、レベカ・アンドラデ(ブラジル)が金メダル、米国のスーパースターのシモーネ・バイルズが銀メダル、そして最初はルーマニアのバルボスが13.700で銅メダルに輝いた。
バルボスはルーマニアの国旗を持ってマットの上で喜びを爆発させていたが、そこに13.666で5位だったチャイルズのDスコア(難易度)採点の見直しを米国チームが求めているとのニュースが飛び込んできた。当初のチャイルズの演技構成のDスコアは5.9だったが、5.8と評価されたため、体操競技では、「問い合わせ(Inquiry)」と呼ばれる抗議を行ったのだ。審判団は、その抗議を認め、Dスコアが5.9となり、総合スコアは13.766となり、逆転でチャイルズが銅メダルを獲得した。
だが、納得がいかないのが、ルーマニア陣営。規定では、この「問い合わせ」は口頭でOKで、得点表示後1分以内に行わなければならないが「米国の抗議は1分を過ぎていたので無効だ」とCASに提訴したのだ。
裁定が出るまでSNSやメディアは大騒動となった。ルーマニアのマルチェル・チョラク首相は、抗議のためパリ五輪の閉会式をボイコットする考えを表明した。
「パリ五輪の閉会式には出席しないことに決めました。体操競技で、選手たちが不名誉な扱いを受けたというスキャンダラスな状況が理由です。誠実に競技を行い獲得したメダルを、抗議で撤回するなんて.受け入れられません」
黒人選手であるチャイルズには、インスタグラムのコメント欄やSNSなどに人種差別的な発言を含めた誹謗中傷が殺到した。「チャイルズが銅メダルを獲得するために不正行為をした」とのいわれなき非難の声も多く見られた。
これに対してチャイルズのコーチであるセシル・ランディ氏がインスタで経緯を説明して反論。
「失うものがない5位だったので後悔しないように問い合わせを行った。まさか受け入れられるとは思っていなかったが驚いたことに受け入れられてしまった。チャイルズは、誰からも何も盗まなかった。ルーマニアのアスリートには申し訳ない気持ちがあり、見るのはとても悲しくて心が痛むものだが、結果とチャイルズを尊重することが重要で、意見が違うからといって彼女を引きずり下ろさないようにする必要がある」と訴えた。
さらにこの問題を複雑化したのは、同じルーマニアの17歳のサブリナ・マネカボイネアの得点が13.7000点とバルボスと同点だったが、Eスコア(出来栄え点)の差で、バルボスより下の順位となったこと。マネカボイネアは、場外に足が出たとの理由で、減点1を取られたが、これも微妙な判定で、ショックのあまりインスタで引退を表明。ルーマニア体操界の“レジェンド”ナディア・コマネチ氏が、ユーロスポーツの取材に答え「私にとって最大のジレンマはサブリア(マネカボイネア)の採点だ。NBCのビデオを確認した。審判部長は足のかかとが場外に出たというが、そんな写真を見ていない」と怒りのコメントを残す事態に発展した。