もしかして?パリ五輪で100グラム計量失格のインド人女子レスラーが銀メダルを要求したCASの評決が13日から16日に2度目の延期…審議が長引く理由は?
パリ五輪女子レスリング50キロ級の当日計量で体重超過の失態を犯して決勝を戦うことを認められなかったビネシュ・ビネシュ(29、インド)がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に銀メダルを授与される権利を主張して提訴していたが、13日に出る予定の評決が16日に延期になった。「NDTVスポーツ」や「インディアトゥデイ」など複数のインドメディアが報じた。評決の延期は、これが2度目。ビネシュは1回戦で東京五輪金メダリストの須崎優衣(25、キッツ)を破る大金星をあげ、その後、決勝進出を果たしたが、2日目に100グラムを落とせず失格。自身のXで電撃引退を表明していた。
「銀メダル以上が確定した決勝までは計量をクリアしていた」と主張
ビネシュやインドのスポーツ界にとってのパリ五輪はまだ終わっていない。銀メダルの権利を要求してCASに提訴した訴訟の評決が予定されていた13日から16日に延期となった。「NDTVスポーツ」によると、インドオリンピック委員会が記者会見を開き、CASも声明を出して延期を発表したという。
五輪期間中には、CASは訴訟に備え、パリ市内にアドホック(臨時出張所)を設け、24時間以内に迅速な評決を行うような体制を整えていたが、ビネシュの訴訟についての評決は、10日の予定が一度、13日に延び、そして今回16日に再び延期となった。2度の延期は異例だろう。
ビネシュは6日の1回戦で須崎に残り10秒で逆転勝ちを収め、その後、準決勝まで勝ち進み、決勝進出を決め、銀メダル以上を確定させた。レスリングは連日当日計量があり、2.7キロ増量していたビネシュは、水分を断ち、徹夜で自転車漕ぎやサウナに入るなどの減量に取り組み、最後は髪の毛まで切ったが、100グラムが落ちず失格となった。
世界レスリング連合の競技規則第11条では、「計量(1回目または2回目)に参加しなかった選手及び失敗した選手は、競技から除外され、順位はつかず最下位になる」と定義されており、ビネシュは、決勝を戦うことは許されず、ショックのあまりXで競技生活からの引退を表明した。
インドオリンピック委員会は決勝まで進み銀メダル以上を確定させた1日目は、計量をクリアして戦ったものであり、この日の結果は有効で銀メダルを授与される権利を有すると主張してCASに提訴した。
ビネシュが計量をクリアできず失格となったため決勝はビネシュと対戦予定だったヒルダーブラントと準決勝でビネシュに敗れたジュスネイリス・グスマンロペス(キューバ)で争われ、3-0でヒルダーブラントが金メダルを獲得した。訴えでは銀メダルのグスマンロペスに加え、“共同銀メダル”がビネシュに授与されるべきだと主張している。
今回の2度にわたる延期はCASの審議で意見が衝突している証拠なのか。審議が長引いている理由をどう受け取ればいいのか。
1度目の延期がなされた際ににビネシュの弁護団の1人のヴィドゥシュパット・シンガニア氏は、インディアトウデイの取材に答え、こんな見解を示している。
「彼らが評決の期限を何度も延長したという事実は、彼らがこの問題について真剣に考えていることを意味します。仲裁人が、それについて考えているなら、それは私たちにとって良いことです。私は過去にCASで多くの訴訟を行ってきました。CASの成功率は非常に低いです。本件では、仲裁人からの画期的な決定を求めています。少し難しいですが、何か大きなことが起こることを期待しましょう」
同氏は、CASが五輪の結果を覆す判例がほとんどないことを踏まえた上で、延期の意味するものに期待を寄せた。
だが、一方で世界レスリング連合のトップであるネナド・ラロビッチ氏は、「起こったことをとても残念に思います。しかし、この計量は公開され、誰もが何が起こったのかを見ています。自分たちのルールに従う以外に選択肢はありません」と、失格の措置が覆り、銀メダルが認められることに否定的な意見を口にしている。果たして16日にCASはどんな評決を下すのだろうか。