なぜパリ五輪“8強GK”小久保玲央ブライアンはベルギーに新天地を求めたのか…「ベンフィカではプロとしての活動を継続できなかった」
パリ五輪の男子サッカーで神懸ったセーブを連発し、U-23日本代表のベスト8進出を支えた守護神、小久保玲央ブライアン(23)が14日、新天地のベルギー1部リーグ、シントトロイデンへのオンライン移籍会見に臨んだ。柏レイソルの下部組織から2019年1月にポルトガルの名門ベンフィカへ移籍。U-23チームやBチームで濃密な経験を積んできた小久保は、なぜ契約を来年6月末まで残す状況でベルギーへの移籍を決断したのか。
ポルトガル1部ベンフィカではほぼ試合に出れず
パリ五輪で神懸ったセーブを連発し、名字をもじって「国防」なる異名をつけられた小久保が、胸中に抱き続けてきた危機感に初めて言及した。
ベルギーからオンラインで臨んだシントトロイデンへの移籍会見。日本代表DF谷口彰悟(33、前アル・ラーヤン)とともにユニフォーム姿で登壇した小久保は、新天地での守護神争いが自身にもたらす変化をこんな言葉で表している。
「このチームでしっかりとスタートラインに立てて、いよいよ自分のサッカー人生、プロとしてのサッカー人生が始まると思っています」
柏の下部組織からトップチームを経由せずに、ポルトガルの名門ベンフィカへ移籍したのが2019年1月。カタールで2018年1月に開催された国際大会で準優勝した柏U-18の守護神として好守を連発し、PK戦を制した準決勝ではベンフィカの前に立ちはだかった小久保の潜在能力が高く評価されてオファーを勝ち取った。
ベンフィカではU-23チームを主戦場としながら、ポルトガル2部リーグに所属するベンフィカBでもゴールマウスを守った。トップチームにも登録されたが、5年半もの長い時間を通して、一度も公式戦出場を果たせないまま昨シーズンを終えた。
昨シーズンのベンフィカのキーパー陣は、ウクライナ代表のアナトリー・トルビンが守護神を、ポルトガル出身のサムエル・ソアレスが2番手を担った。前者は小久保と同じ2001年生まれの23歳で、後者はひとつ年下の22歳だ。
両者は先週末に開幕した今シーズンでも、そろってメンバー入りしている。さらにポルトガルリーグで最多となる38回もの優勝を誇り、昨シーズンも2位に入ったベンフィカには、毎年のように優秀な若手が移籍してくる。実際にトルビンは昨年8月に、母国の強豪シャフタール・ドネツクから5年契約で加入していた。
トップチームで公式戦出場を争えなかったベンフィカでの軌跡を、小久保はあえて「プロ」とは位置づけなかった。オンライン会見ではこう語ってもいる。
「素晴らしいキーパーがそろっていたし、ハイレベルな競争もあったなかで、トップチームのベンチには数回座ったものの出場機会を得られなかった。キャリアをちょっと狂わせるようなシーズンをすごしてきた、という思いも自分のなかにはありました」
ベンフィカは一流の守護神を輩出してきた歴史をもつ。過去にはスロベニア代表ヤン・オブラク(31、現アトレティコ・マドリード)やブラジル代表エデルソン(30、現マンチェスター・シティ)が羽ばたき、ギリシャ代表オディッセアス・ヴラホディモス(30、現ニューカッスル・ユナイテッド)は2022-23シーズンまでの守護神だった。
キーパーを育成するクラブ伝統のノウハウに感謝しながらも、来年6月末まで契約を結ぶベンフィカに留まるのは、自身のサッカー人生を考えたときに決してプラスにはならない。将来へ危機感を募らせていた小久保のもとへ、完全移籍によるオファーを出してきたのがベルギー1部リーグのシントトロイデンだった。