なぜ日本ボクシング連盟は性別騒動で非難殺到のIBA脱退に踏み切れなかったか…新組織ワールドボクシングとの苦肉の重複加盟方針…アスリートファーストが背景に
ただIBAは重複加盟を認めていない。
仲間会長は、オンラインでIBA幹部と協議した際に「WBとの重複加盟をせざるをえない」ことを伝えたが「強気なスタンスで難しい」反応だったという。
両団体に複数加盟を行っている国もあるそうだが、昨年11月に、IBAのウマール・クレムリョフ会長を日本に招待して、AIによる新採点システムを披露。ドバイのIBA総会で日連が正式にその採点システムをプレゼンするなど、親密な関係だった日本が、IBAのライバルのWBに加盟すれば、反対の姿勢を強めて「WBに加盟するなら脱退せよ」と強行に二者択一を迫ってくる可能性もある。
「その場合はどうするのか?」と問うと、仲間会長は「ずるい話かもしれないが、うまく立ち回るしかない」と苦しい回答だった。
アスリートファーストとリスクヘッジを兼ねた“重複加盟”が可能であれば、それはベストな選択かもしれない。だが一方でIOCと対立姿勢と強め性別騒動で国際的な非難を浴びたIBAに日本が加盟し続けることを疑問視する声も出てくるだろう。
今回IBAが騒動の引き金を引いた性別騒動についても「連盟内では議論はしていない。どちらのスタンスに立つわけではない。あくまでも会長の個人的な意見」(井崎副会長)として仲間会長が個人的な見解を述べるに留まった。
仲間会長は「この問題は政治的、社会的、思想的なものと完全に切り離さねばならない」と伝えたが、連盟内で議論もしていないことこそ思い切り政治的だ。。
仲間会長は「世論がIBAに対してネガティブで、ロシアが牛耳っているような組織が、IOCやバッハ会長を直接批判している状況があり、我々が生活している西側の自由資本主義社会のマインドとして、そんなものと一緒に動くべきではないと思われる人もいると思う。だが、国際スポーツの中で、それに対してついていけないとバサっと切れるほど日本は強くない。バランスを考慮した上での発言だと理解してもらいたい」と弁明した。
一方、WBは日本のIBAとの重複加盟を認める方向だという。
IOCのバッハ会長は、来年早々には、ロス五輪での競技継続の可否を決める方針を示しているが、新組織のWBがそこまでに50か国以上の加盟国を集めるのが条件とされている。現在42か国。日本と性別騒動に巻き込まれたイマネ・ケリフのアルジェリアが加わっても50か国にはまだ6か国足りない。仲間会長は「50はいくだろうと考えている」との見通しを語るが、パリ五輪男子で5階級に金メダリストを輩出したウズベキスタンや、女子で3階級を制した中国などの“強国”がWBに加盟しておらず、アフリカ諸国も現状は1か国だけ。五輪という最高の舞台にふさわしいレベルや競争力をWBが担保できるのか?という疑問もある。
またユース世代の大会についてIBAとWBの大会日程が重なる問題も出ていて「どちらに派遣するか。大会の格もある。選手がどうしたいかの意見を聞きたいが、重複加盟の状況だと、こういうネガティブな影響もある」と、仲間会長も重複加盟に問題が残っていることを認めた。
いずれにしろ重要なのは、政治ゲームではなくアスリートファースト。重複加盟を認めていないIBAの出方も含めて、今後の日本アマチュアボクシング界の国際団体、そして五輪との向き合い方に注目が集まる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)