「生物学的な議論があるかもしれないが社会的に女性として生きてきた人が批判されたのは遺憾」日本ボクシング連盟会長がパリ五輪の性別騒動ボクサーについて個人的見解
日本ボクシング連盟の仲間達也会長(43)が18日、パリ五輪で起きた性別騒動についての個人的見解を述べた。仲間会長は、今回の問題の背景にIOC(国際オリンピック委員会)とIBA(国際ボクシング協会)の政治的な対立やジェンダーに対する思想的対立が絡んでいたことを指摘した上で「生物学的な議論はあるかもしれないが、社会的に女性として生きてきた人が批判にさらされたのは遺憾だと思う」と伝えた。パリ五輪では女子66キロ級でイマネ・ケリフ(25、アルジェリア)、女子57キロ級でリン・ユーチン(28、台湾)の2人が性別騒動に巻き込まれ、誹謗中傷にさらされながらも金メダルを獲得した。
「政治、思想、社会的な問題から切り離すべき」
パリ五輪で性別騒動に巻き込まれた2人の金メダリストの戦いを東京五輪で入江聖奈、並木月海という2人のメダリストを生み出した日本ボクシング連盟はどう見ていたのか。連盟が今回の騒動の引き金を引いたIBAに加盟しており、検討していた脱退に踏み切れなかったという現在の立ち位置もあってか「連盟内で議論はしていない。どちらに立つというスタンスではない。あくまでも会長の個人的見解」とした上で、仲間会長が見解を語った。
「IBAとIOCがもめている政治的議論のなかでIBAが、このタイミングで(性別適格性検査での失格問題を)ぶつけてきた。(性別適格性)検査がどこで行われたのか。WADA(世界アンチドーピング機構)の承認機関だったのか。なんの検査をしたのか。各国のNF(統括団体)レベルで、正確な情報を把握できていない中で、染色体検査結果という超個人情報を暴露された。このタイミングでこのオープンの仕方は少しどうなのかな?と思う」
そう疑義を呈した。
IBAは昨年の女子世界選手権でケリフとリンに性別適格性検査を行い、一般的に男性が持つ「XY」染色体が検出され、失格処分にしたと発表したが、仲間会長が指摘するように検査の実態が不透明で、IOCも会見を開き「IBAの検査は不透明で欠陥がある」と指摘している。
さらに仲間会長は今回の騒動には「議論が2つある」とした。
「ひとつは生物学的に男性に近い女性が女性の個人競技スポーツに出場すべきかどうか。(もうひとつは)こういう結果(染色体の検出)が出たから、大会から除外すべきだと言って除外されるものではない。政治的、社会的、思想的なところから完全に切り離して、専門家を交えた科学的議論をして、大会に応じて基準を発表すべき。この問題が政治や思想に使われてはいけない」
昨年IBAは不正が横行する不透明なガバナンスを問題視され、IOCから五輪の統括団体としての資格を取り消されて排除された。IBAはそのIOCに対決姿勢を強めて今回の性別問題を持ち出し、トーマス・バッハ会長の個人攻撃も行った。2021年の東京五輪もその前の世界選手権でも出場の認められていた2人の性別騒動が起きた背景には、そのIOCとIBAの政治的対立がある。
またLGBT権利運動に懐疑的な立場をとる人気作品「ハリーポッター」の作者、J.K.ローリング氏や、イタリアのメローニ首相、米国のドナルド・トランプ元大統領らが批判的なコメント、投稿を行い、思想的な対立にも巻き込まれた。