V1戦に挑むWBO王者の武居由樹がモンスター井上尚弥から“琉球の壊し屋”比嘉大吾をKOで葬る秘策を授かる
八重樫トレーナーはマロニー戦で見せた弱点を解決したことも明かした。最終ラウンドにグロッキー寸前に追い詰められる大ピンチを招いた部分だ。
“ガス欠”に見えたが「ガス欠ではなく体が動かなくなった。原因はわかった。コンディションの問題。そこは解決した」と断言した。リカバリーも含めた試合前の食事に足りない栄養素があったという。
一方の野木トレーナーもそのマロニー戦の最終ラウンドに注目していた。シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子を育てた故・小出義雄氏の指導を受けて、スポーツ科学の知識が豊富な野木トレーナーの見解はこうだ。
「おそらくグリコーゲンの枯渇です。呼吸法などで解決はできます」
元6階級制覇王者のオスカー・デラホーヤ(米国)がマイク・クオーティ(ガーナ)との防衛戦で同じように終盤に動けなくなり、辛くも2-1判定で逃げ切った試合があったという。
通称「野木トレ」と呼ばれる野木トレーナーが指導する階段を使ったトレーニングに大橋ジムのメンバーは昔から参加しており、武居も世界戦が決まるまで、一緒に走っていた。武居の運動能力を知り尽くしている野木トレーナーは、その最終ラウンドの残り1分に勝機を見つけた。
「もっと激しい展開に引きずり込まないといけないが、あの12ラウンドの最後の1分を全ラウンドでやれれば勝てます。武居選手は素晴らしいチャンプなので、やりたいことができるとは思っていませんが、不可能ではありません」
野木トレーナーはかつて指導していた内藤大助が圧倒的に不利と言われたWBC世界フライ級王者のポンサクレック・ウォンジョンカム(タイ)との3度目の対戦で判定勝利した際も「1ラウンド目の戦いを12ラウンド続けることができれば勝てる」と目標を立てた。そのためのトレを積み内藤は3-0判定勝利している。
サウスポーを苦手とする比嘉が得意の激しい打撃戦に持ち込めるのか。それとも武居がジャンピングフックや遠い距離からのボデイ攻撃で比嘉を空回りさせるのか。あるいは打撃戦の中で井上直伝のアッパーで仕留めるのか。
あらゆる勝負論が考えられる好カード。
大橋会長は、「比嘉選手は10年前から出稽古で来ていて、よく知っているだけに複雑な気持ち。大橋ジムの強さの根本は野木さんのトレーニングにある。その恩返しを勝利をプレゼントするのではなく、こちらが絶対に勝つという気持ちでいく。凄いKO決着になると思う」と宣言した。