「喧嘩売っているの?」なぜ那須川天心は「2日で7大世界戦」の地域王座初挑戦で日本人王者と戦わないのか…本人が説明する“裏事情”と危険な比国ボクサー
日本プロボクシング協会の内規で国内での世界戦は、挑戦の乱立を避けるために地域タイトルを取ることが条件とされている。それが世界挑戦への切符となるが、バンタム級の日本タイトルは同門の増田陸が獲得したばかりで、OPBF東洋太平洋か、このWBOアジアパシフィックしか選択肢はなかった。
実は天心は「日本人の王者がいるんだからそのベルトに挑戦した方がわかりやすい」と、28戦19勝(16KO)8敗1分けのハードパンチャーの東洋王者、栗原慶太(一力)への挑戦を熱望していた。だが、栗原が7月22日のノンタイトル戦でフィリピン人ボクサーを相手に大苦戦。一時、引退をほのめかすほど落ち込み、目に負傷を負うなど肉体的なダメージも大きかったため、栗原陣営は「年内の試合は無理」とストップをかけていた。
「前回がよくなかったと聞いた。ダメージも溜まっていて、辞める(引退)とも言っていたし、ちょっとメンタルに問題があるのでこっちで組まれた。ベストな状態でやりたいし、なんか(批判を)言われる可能性もある」
天心が裏事情を説明した。
そして「地域タイトルの統一戦はやりたい」とも口にした。WBOアジアパシフィックのベルトを腰に巻いた後に、体調が万全になった栗原との地域タイトルの統一戦を行おうというのだ。
だが、WBOアジアパシフィック王座決定戦の相手は、危険な相手だ。23歳の9戦全勝のフィリピン人、ジェルウィン・アシロ。昨年12月に10回判定でWBOアジアパシフィックユースのバンタム級王座を獲得し、今年7月27日には、WBOオリエンタルバンタム級王座を2回KOで奪うなど勢いに乗る。
とにかく荒っぽい。一発一発を強打してくるラフな超好戦的なファイター。日本非公認の地域王座を獲得した前戦では、杉田ダイスケ(ワタナベ)や田井宜広(RST)に負けているスラト・エアイム・オン(タイ)を2回にコーナーに追い詰め、右アッパー一発で倒した。相手は顎でも折れたのか、かなりの時間その場を動けなかった。
その2戦前も7勝11敗のジェリー・パピラ(フィリピン)に2回KO勝利。これはボディの乱打で2度ダウンを奪い、相手の心を折った。サウスポーとも2試合対戦。そのうち1試合は4回TKO勝利している。
天心は、「間、間でカウンターを狙ってくる。フィリピンと聞いて、パッキャオみたいなタイプと思ったが違う感じ」と、フィリピンが生んだ“レジェンド”マニー・パッキャオの名前を出して冗談交じりに返したが、危険だとの認識はある。