今日ゴング!なぜ井上尚弥は当日増量制限のないドヘニーに「10キロ以上増えたらボクシングができないところをお見せする」と豪語したのか…JBCルールは8%増量で転級勧告も
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(31、大橋)が元IBF世界同級王者のTJ・ドヘニー(37、アイルランド)の挑戦を受けるタイトル戦の前日計量が2日、横浜市内のホテルで行われ、井上はリミットピタリの55.35キロ、ドヘニーが250グラムアンダーの55.1キロでそれぞれ一発クリアした。ドヘニーは、当日に10キロ以上を増量してくることで知られるが、当日計量は実施されずJBC(日本ボクシングコミッション)では、8%以上の増量に転級を勧告、今後は10%以上の増量の場合強制的に転級させることを検討中だが、今日の試合ではどれだけ増やしてもフリー。体重差が問題になるがそれでも井上は「10キロ以上も戻したらボクシングできないぞというところを見せてやる」と豪語。大橋秀行会長(59)も「体重増加にはデメリットがある」と問題にしていなかった。
「階級制のボクシングは体重があればいいだけではない」
18秒続いたフェイスオフ。先にニヤッと笑ったのは井上だった。右手を差し出すと、ドヘニーも応じて手を握ったまま、離れ際に左手で4団体王者の右肩をポンポンと2度叩き、その手で、まるで子供をあやすかのように後頭部あたりを撫でた。
リスペクトに欠いた行為には見えなかった。
31歳と37歳。4団体王者と元IBF王者。立場と実力は違えど年長ボクサーの余裕か。
井上は「気合はものすごく感じられた。やっぱり気を引き締めて、いつも以上に集中していかないといけない」と感じた。
ただそのドヘニーの肉体の変化を見逃さなかった。
「だいぶ水を抜いたなって感じ。だからこそのリカバリーだと思う」
ドヘニーは当日体重を10キロ以上戻すことで知られている。
大橋会長も「公開練習のときに比べるとずいぶん小さくなっていたね」という。
まるで干からびた梅干しのような肉体は、水を含むとぶくぶくと増強する。
昨年10月に井上のスパーリングパートナーを務めてきたジャフェスリー・ラミド(米国)を1回TKOで退けた試合では12.6キロを増量し、当日は67.8キロでリングに上がった。スーパーウエルター級に相当する体重だ。
井上も試合当日は61、62キロまでは増やしている。それでも体重差は4、5キロ。階級でいえば2階級違う相手だ。IBFでは当日計量を実施し、10ポンド(4.536キロ)以上の増量は認められていないが、今回は4団体統一ルールが採用され当日計量は実施されない。JBCの内規では8%以上の増量があった場合、転級を勧告することになっており、近年水抜きの失敗による体重超過が目に余るため、10%以上の増量に関しては強制的な転級を命じることが検討されている。だが、今日の試合に関しては制限はなくフリー。階級制のスポーツにおいて井上は合法な体格差のある相手と戦わねばならない。
だがモンスターはそんな問題を意に介していなかった。
「ただまあねえ、自分相手にそんな10キロ以上も戻したらボクシングできないぞというところを見せてやりたいなと思っている。この階級制のボクシングというものは、体重があればいいだけではないと自分は思っている。そういうところも含めて、明日はボクシングを見せていきたいなと思っています」
大橋会長もドヘニーの体重増がもたらす効果について「これまで戦ってきた中で(ノニト)ドネア、(ルイス)ネリの方がパンチ力はあるが、パンチの重さでいえば、ドヘニーの方があるんじゃないか」と警戒した上で、こう、ぶった斬った。
「体重が増えても筋肉がでかくなるわけじゃないからね。すべて水分だから。デメリットはある。前半はいいかもしれないが、後半になると厳しいんじゃないかね」
体重増加でパンチ力とパンチへの耐久性にはプラスの効果を及ぼすだろうが、一方でスピードを失い、スタミナが切れるというデメリットもある。だから大橋会長は、ドヘニーが前半勝負に出てくる可能性があると踏んでいる。井上がネリ戦で1ラウンドにダウンを喫しているからなおさらだ。
大橋会長は「1ラウンドに勝負をかけてきても大丈夫。裏をかいて終盤の勝負となってもすべてに対応、準備ができている」と続けた。