「モンスターは奇妙な方法で勝つ」海外メディアは井上尚弥のドヘニーの珍しい腰痛での7回TKO勝利をどう評価したか?
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(31、大橋)が3日、東京江東区の有明アリーナで元IBF世界同級王者のTJ・ドヘニー(37、アイルランド)との防衛戦を7回16秒TKO勝利で飾った。ドヘニーが腰を手で押さえて歩けなくなっての棄権。意外な結末に会場は騒然となり、井上も「中途半端な終わり方になった」と不完全燃焼を認める戦いとなったが、海外メディアはモンスターとドヘニーの実力差を強調。次戦が12月に国内でWBO&IBF世界同級1位のサム・グッドマン(25、豪州)との防衛戦になることに加え、リング上で共同プロモーターであるトップランク社のボブ・アラムCEO(92)が、来年米ラスベガスに井上が登場する可能性を明かしたことに注目した。
「ネリ戦のようなドラマはなかった」
「一体何が?」
突然のエンディングに会場が騒然となった。
7回に右ストレートで下がらせ、ボディにコンビネーションブローを集めると、ドヘニーは腰を押さえながら足を引きずり、顔をしかめてギブアップ。あっけない形でのTKO勝利となった。
井上はリング上でのインタビューで「みなさんが期待していた試合内容ではなかったですが、長く試合をしていれば、こういう試合もある。まだまだ未完成」と反省を口にし、記者会見でも「理想的な終わり方ではなく中途半端な終わり方になった」と話した。
海外メディアは、この試合をどのように報じたのか。
「井上が戦い続けることができなくなったドヘニーに奇妙な方法で勝つ」との見出しを取って報じたのは英メディア「トークスポーツ」だ。
「井上がアンダードックのドヘニーを相手に防衛に成功した。7回にドヘニーは戦いを止め、井上は最新の勝利を手にしたが、本当に奇妙な方法で彼が望んでいた支配的なKO劇ではなかった」と、ダウンシーンがないまま、7回の棄権によって試合が終了したことを説明した。
同メディアは「試合は井上がセンターを取ってコントロールしようとするところから始まり、ドヘニーは下がりながら足でリズムとアウトボクシングをしようとした。ドヘニーは右のビッグパンチをもらい勇敢な努力にもかかわらずコーナーを背に傷ついたように見え始めた」と試合をレポートした。
また同メディアは、次戦がグッドマンとの指名試合になることを伝えた上で「井上は次にフェザー級で5階級制覇を狙う可能性がある。彼の破壊力は、WBA王者のニック・ボールやIBF王者のアンジェロ・レオのような選手が待ち構えている新しい階級で再び手ごわい威力を発揮する可能性が十分にある」と将来を展望した。
米の権威ある専門誌「ザ・リング」は「井上がドヘニーを7回で止め、リング誌と122ポンド級(スーパーバンタム級)統一王座を保持」との見出しを取り「井上は新たな勝ち方を見出し続けている。今回は負傷によるTKOでドヘニーに7回に敗北を認めさせた。パンチのコンビネーションで、ドヘニーの足を疲れさせ、痛みで足を 引きずらせた」とドヘニーが棄権したシーンを伝えた。
同誌は「東京ドームでの5月6日の井上の前回の 防衛戦よりもドラマはかなり少なかった」と、1ラウンドにダウンを喫した前回のルイス・ネリ(メキシコ)戦を引き合いに出し、「この試合で、あの脅威に近いものが再現される様子は何も浮かび上がってこなかった」と、危ない場面がまったくなかったことを記した。
同誌によると、4つのベルトを2度防衛したのはデビン・ヘイニー(米国)、サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)に並ぶ史上3人目の快挙だという。
そして「もしかしたらより興味をそそるのは彼の将来のプランかもしれない」とし「次戦はグッドマンがIBFの指名挑戦者として戦うと示唆されている」と紹介。「12月に勝利すれば、まだどの大きさの会場かは明らかにされていないが、井上が 米国に戻ってくる計画がある」と続けた。