ゴール後“頭下げポーズ”の伊東純也はやはり森保ジャパンで不可欠な存在なのか…W杯アジア最終予選開幕戦で中国に7-0圧勝
3バックにおける右ウイングバックは、ドイツ、スペイン両代表を撃破したカタールW杯でも経験している。それでもブランクをまったく感じさせなかった理由は、久保が伊東との関係に言及した言葉に反映されている。
「前半は際どいパスコースを探すあまりに、ちょっとボールをもち過ぎた場面があったかな、という感触がありました。なので、後半に伊東選手が入ってからは、シンプルにパスをはたこう、と。もちろん堂安選手とならば、コンビネーションで彼のよさを引き出せるし、逆に彼が僕に得点やアシストをもたらしてもくれますけど」
伊東にパスを預ければ、森保ジャパンのなかでも三笘と双璧といっていい、突出した個の力をフル稼働させて局面を打開してくれる。離脱する前から寄せられていた絶対的な信頼感は、推定無罪の原則のもと、スタッド・ランスでピッチに立ち続けてきた伊東からは失われていない。森保一監督(56)も伊東のプレーにこう言及した。
「純也の特徴はサイドから攻撃的に崩していく部分であり、それがわれわれの大きな武器であると、プレーと存在感、そして結果のすべてで示してくれた」
アジアカップから途中離脱するまでには、選手たちの反対もあって決定が二転三転している。スピードを駆使した攻撃面での突破力だけでなく、チームのために守備面でも献身的に動き、泥臭い仕事も厭わない伊東の復帰を誰もが待ちわびてきた。
ベンチにいたメンバーを含めて、復活ゴールを全員で喜び合った光景は、伊東が必要とされる証といっていい。右ウイングでもプレーする久保は、伊東と再び共闘し、お互いを生かし、高め合う状況に抱く思いをこんな言葉で表している。
「みんながライバルだと思っていますけど、それでもみんなの活躍は素直にうれしいですよ。ライバルが活躍してくれないと、こちらも困ってしまうので」
2人の女性に対する準強制性交致傷容疑で、大阪地検へ書類送検されていた伊東は8月9日に嫌疑不十分での不起訴処分が決まった。そのうえで7月下旬から実施された、スタッド・ランスの日本ツアーにおいて、伊東を取り巻いていた状況を踏まえた森保監督が、今回のアジア最終予選から復帰させると決めた。
代表に招集されなかった間も森保監督とコンタクトを取り、不起訴処分を含めて、状況が変わるのを待ってきた伊東は、復帰までの7カ月をこう振り返った。
「本当に悔しい時間でもありましたけど、チーム(スタッド・ランス)でしっかりとプレーしていたし、代表チームともうまくコミュニケーション取ってきたなかで、いまはアジア最終予選でチームに貢献していくことしか考えていません」
グループCの他の試合では、伏兵バーレーン代表が敵地でオーストラリア代表を撃破する波乱が起こった。日本は日付が6日に変わってすぐに日本を飛び立ち、10日(日本時間11日)に敵地リファーでそのバーレーンとの第2戦に臨む。
過去2大会連続でアジア最終予選の初戦で敗れたトラウマを、森保ジャパンは怒涛のゴールラッシュとともにあっさりと乗り越えた。勢いと自信を同居させながら、8大会連続8度目のW杯出場へ向けて、最高といっていいスタートダッシュを切ったチームのなかで、伊東が放つ存在感がますます大きくなっていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)