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武居(右)と比嘉(左)の意地と意地がぶつかりあった(写真・山口裕朗)
武居(右)と比嘉(左)の意地と意地がぶつかりあった(写真・山口裕朗)

あの運命の最終回に何があったのか…WBO世界バンタム級王者の武居由樹と比嘉大吾の名勝負の裏を追跡…元K-1王者は那須川天心戦を熱望し比嘉は引退を示唆した

「正直、K-1時代からやりたかったが、交じあうことはなかった。K-1でモチベーションが下がった頃に、天心がボクシング転向を発表した。僕も(ボクシングに)いってみようという気持ちが芽生えた。その時からやれたらいいなという気持ちがあった。THE MATCHで天心が東京ドームで武尊選手と戦ったときには悔しい気持ちもあった」
 2年前に天心はK-1王者の武尊と東京ドームで世紀の対戦をしたが、武居は複雑な気持ちで観客席に座っていた。だが今は武居が王者。新たな運命が動き始めている。
「ただ、今日の内容じゃまだまだ。もっと引き出しも増やして底上げしないと。まだまだ成長できると思う」
 未来に燃える武居と対照的に比嘉は引退を示唆した。
「やりきったという感じがします。ボクシング人生に色々あって、野木さんとは18歳から一緒にやって、また途中で色々あって…楽しい10年間でしたね。勝ったら次頑張ろ、負けたら、もう悔いがない…野木さんもチームのみんなも(僕が辞めることを)わかっていると思う。最初から最後まで楽しめました」
 6年前のWBC世界フライ級タイトルマッチの計量で体重超過を犯して王座を剥奪され、当日体重に制限をつけて行われた試合でTKO負けを喫した。JBCからは無期限の活動停止処分を受けた。引退を考えたが、野木トレーナーの熱心な働きかけで、再起を決意し、ジムも移籍した。だが、引退を撤回したのは「お金のためだった」という。
「でも今日気づいた。みんなは無償で僕のことを思ってくれている。世界戦を組みトレーナーをしてくれた。チャンピオンになれなければ恩返しはできないけれど、また今後違う形で恩返しができればいい」
 2か月前、野木トレーナーに喫茶店に呼び出されて「死ぬ気でやる」と誓った。気持ちや練習にムラがあり、その才能を持て余していた沖縄からきたボクサーは、死ぬ気で野木トレーナーのメニューについていった。試合前に比嘉は、二宮マネージャー、野木トレーナーらスタッフ全員に感謝の気持ちを伝えたという。
 そしてリング上で武居にこういうメッセージを残している。
「もっと上へいけよ」
 実は、野木トレーナーも二宮マネージャーもまだ比嘉の引退の申し入れを受け入れていない。あと3分間頑張れば世界王者だったのだ…。時間を置き、また再び比嘉大吾が立ち上がることを待つつもりだという。

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