何が最後のTG戦の明暗を分けたのか…阪神1球の配球ミスとバットを短く持ちノーステップに変えた“代打”坂本勇人のプライド…巨人マジック4で最短27日にV
巨人が23日、甲子園で阪神に1-0で勝利してゲーム差を「2」に戻してマジックを4に減らした。中4日登板の巨人フォスター・グリフィン(29)と復帰後4勝0敗できていた阪神の高橋遥人(28)の息詰まる投手戦となったが、前日に大ブレーキとなりスタメンを外れた坂本勇人(35)が7回無死一、三塁で代打で決勝タイムリーを放ち、前日スコアの裏返しである「1-0」で勝利した。巨人は最短で27日にも4年ぶりの優勝が決まる。
「何か起きてくれと、最後は気持ちで打った」
1球が勝敗を分けた。
7回だった。
阪神先発の高橋は、6回まで2安打無失点。実にゴロアウトが11個で外野へ飛んだのは、6回の浅野のライトフライだけ。ゴロアウト率がリーグトップで70%を超える高橋が、丁寧にボールを低めに集めて、完璧と言っていい投球内容で巨人打線を支配していた。しかも球数もまだ73球だった。
先頭の吉川がセンター前ヒットで出塁した。吉川は4回無死一塁でバントができずにスリーバント失敗で得点圏に進めることができなかった。忸怩たる思いもあったのだろう。
4番の岡本がレフト線へのヒットで続き、吉川は迷わず二塁を蹴り三塁を陥れた。阿部監督が試合後に「大きかった。その前に(三塁コーチの)亀井コーチが(三塁を狙えと)言ってたんでね。いい走塁だった」と振り返った好走塁だった。
梅野は岡本を2ナッシングと追い込んで内角へのストレートを要求した。ゾーンのギリギリを攻めたかったのだろうが、それが甘く入った。制球ミスだが、そのリスクを伴った“もったいない”配球である。そして、この内角球の制球ミスが尾をひくことになる。
阿部監督は、無死一、三塁のチャンスに2打席、高橋のボールが見えていなかった大城に代えて代打に坂本を送った。
「今日はもう全員でいこうと思っていた」
前日のゲームでは3度あった得点機にブレーキとなった。そのうち2度は外野フライで1点の場面だった。ストレートに差し込まれ、まるで振れていなかった。阿部監督は左腕の高橋に対して坂本をスタメンから外して、左対左の大城を使っていた。勇気のある決断である。
坂本は奮い立っていた。
「昨日僕はめちゃくちゃ暗かったと思うんですけど、今日も若い選手たちが本当に元気を出して試合前からやってくれていたので良い雰囲気でやれている」
リーダーシップを発揮せねばならない立場だが逆に若手が元気をくれた。
「昨日大事な試合で僕が全然打てなくて負けてしまった。今日また代打でああいう場面で回してくれたチームメイトにすごい感謝の気持ちを持ちながら打席に立った」
阪神は、ここで内野にバックホーム隊形ではなく二遊間を下げて併殺狙いの守備隊形をとった。1点はやむなしの陣形である。
初球の外角ストレートがボールになり、2球目のインサイドへのカットボールがファウル、そして3球目のツーシームで空振りを取った。
追い込まれて坂本はバットを短く持ち、ノーステップ打法に変えた。
「追い込まれていたので最後はステップをせずにいった。普通にやっていても全然打てない。スタメンも外れていたし、何とか工夫して試合に臨んだ。何とかバットに当てて何か起きてくれと思いながら最後は気持ちで打った」
何が何でも食らいつく。坂本は、外野フライ狙いではなく、バットに当てて内野へボールを転がせば何とかなると考えていた。
投手有利の1-2のカウントで梅野は外角へストレートを要求した。それはボールになった。岡本への内角への制球ミスが頭に残っていたのだろう。そして5球目。149キロのストレートを外角へ。坂本は食らいつき、ライト前へライナーでタイムリーを弾き返した。打った瞬間、坂本は吠えていた。
阪神のベンチでは岡田監督が何かをつぶやいていた。おそらく外角ストレートの配球に納得がいかなかったのだろう。バットを短く持ち「当てよう」と考えている打者にそれは絶好球。食らいつきにくい球種、コースを選択すべきだが、結果論ではなく、その配球は正しいとは言えなかった。