4年ぶりにV奪還の阿部巨人と球団初の連覇を逃した岡田阪神の何がどう違ったのか…フロントのバックアップ体制に温度差
対する阪神は、5月が打率.213、9本塁打、65得点、6月が打率.214、5本塁打、50得点と大スランプに落ち込み、チーム成績も、5月が10勝13敗1分、6月が9勝12敗1分けと借金を作った。この時期の勝ち負けが最終的な両チームのゲーム差につながった。
特に森下、大山、佐藤という主軸が不振で、それぞれ2軍落ちを余儀なくされ、昨年の優勝を支えた不動の打順を動かさざるを得なくなり、近本に12試合も4番を任せた。その影響で安定していた近本まで6月の打率は.157まで落ち込んだ。
阪神は夏場に入って徐々に打線の調子を取り戻し、打順も固定できるようになり、得点圏打率のランキングで、森下、大山、佐藤、近本らが上位を占めたた。だが、9月の猛攻も間に合わなかった。
打線の整備に関しては、フロントのバックアップ体制の違いが大きく影響している。巨人は、開幕前に新外国人のオドーアが退団するショッキングな出来事があったが、ヘルナンデス、モンテスを途中で獲得した。ヘルナンデスは怪我で9月の重要な時期にいなくなったが、打率.294、8本塁打、30打点で“助っ人”となったし、モンテスも37試合に先発起用され打率.276、1本塁打、14打点の成績を残した。
対する阪神は、2年目のノイジーがまったく成長を見せずに打率.231と低迷して6月下旬に2軍落ちすると重要な9月決戦の最中に帰国した。同じく2年目の成長に期待して残留させたミエセスも戦力にならなかった。岡田監督が強く新外国人獲得を訴えなかったのかもしれないが、そもそもフロントはオフに新外国人を獲得しておくべきだったし、ノイジーの不振が明らかになった時点で巨人のように途中で緊急補強に動くべきだっただろう。
ある球団幹部は「うちが欲しいのは一発のあるタイプで、巨人のヘルナンデスのようなタイプではない。ただご存じの通りメジャーのマーケットも人材不足で候補選手がいない」と説明していた。阿部監督は「全員がひとつの方向を向いていた」ことを優勝の要因にあげたが、何が何でも勝ちにいった巨人のフロントと岡田監督に“おんぶにだっこ”だった阪神のフロントの温度差が明暗を分けたと言っていい。
阿部監督は優勝インタビューで「菅野が凄く引っ張ってくれているのが見えていた。それに戸郷やいろんなピッチャーが何とか切磋琢磨してやってくれた」と菅野の名前を出した。
岡田監督も「やっぱり菅野やろ。あれだけ貯金をつくったことが大きい。そこに尽きる」と菅野の存在を口にした。
15勝3敗、1.67の数字を残して軸となった菅野は、昨季になかったプラス戦力であり、チームリーダーの役割を果たした。中4日でも投げたし、9月22日の阪神では負け投手にはなったが1人で投げ切った。大城が不甲斐ない守備をすれば容赦なく叱咤し、若手投手に声をかけ、戸郷は、菅野に引っ張られる形で12勝8敗、防御率1.95の数字を残した。