「難しかった。眠れなかった。私は完璧な人間じゃない」大谷翔平の猛追を受けてわずか4厘差で3冠王を阻止したパ軍アラエスが心情を吐露
ドジャースの大谷翔平(30)が29日(日本時間30日)、今季最終戦となる敵地のロッキーズ戦に「1番・DH」で出場し3冠を獲得するために首位打者部門での大逆転を狙ったが、4打数1安打で、打率.310となり、パドレスのルイス・アラエス(27)が同日のダイヤモンドバックス戦に「1番・一塁」で出場して3打数1安打をマークし打率.314をキープしたため、惜しくも4厘差で12年ぶりの快挙を逃した。それでも59個目の盗塁を決めて「54―59」で終えトリプルスリーも達成。2冠も確実なものにした。肝を冷やしたアラエスは米メディアに「難しかった。眠れなかった。私は完璧な人間じゃない」と心情を吐露している。
首位打者にわずか4厘差届かず
大谷が大逆転で首位打者を獲得するには4安打以上が必要だった。
第1打席は二ゴロ、第2打席は遊ゴロ、そして第3打席も二ゴロ。夢の3冠王への扉が、どんどん閉まっていく。
「3冠王はあまり考えてなかった。どのぐらいの差があるのかとかもよく分かっていなかった。とりあえず自分のいい打席を送りたいなと思っていた」とは大谷の試合後のコメント。
何も記録を意識して力んでいたわけではない。
ロッキーズ先発のライアン・フェルトナーの出来が素晴らしく強力なドジャース打線を6回までヒットわずか1本に抑え込んでいたのである。
大谷は同点に追いついた8回一死一塁の第4打席で、打球速度178キロの火の吹くようなライト前ヒットを放ち、今季59個目となる盗塁まで決めた。最終的な打率を.310にしたが、アラエスは同時進行していたダイヤモンドバックス戦で3打数1安打をマークして、打率.314をキープしたため惜しくも4厘届かなかった。2012年のミゲル・カブレラ(タイガース)以来となる3冠王は獲得できなかった。
ESPNやMLB公式サイトによると試合後にアラエスは大谷の猛追にとんでもないプレッシャーを受けていた心情を吐露している。
「難しかった。昨夜は眠れなかった」
それはそうだろう。12試合連続安打でシーズンを終えた大谷は、この間の打率が.547。アラエスが試合に出なかった場合、大谷は、5打数4安打以上が必要だったが、ありえない数字ではなかった。
アラエスが前日の試合を欠場したため、SNSでは「逃げるのか?」などの誹謗中傷も受けた。その中でアラエスは、その最終戦に「1番・一塁」で出場して、堂々と大谷との勝負を受けて立った。しかし、第1打席は、ダイヤモンドバックスの先発ブランドン・ファートのカーブに手を出して三振した。
「今日、最初の打席で三振した。そんなことは決して起こることじゃない。でも私は人間だ。私は完璧ではないんだ」
広角に打つ左打者のアラエスのニックネームは「ラ・レガデラ」。スペイン語で「スプリンクラー」を意味する言葉で「三振をしない打者」として知られている。
これが今季29個目の三振。8月から9月にかけて141打席連続無三振という記録を樹立した。ここ20年間では、メジャー最長の連続無三振記録であり、球団では1995年のトニー・グウィン以来、2番目の最長記録だった。そのアラエスが三振するのだから、普通の精神状態ではなかったのだろう。
第2打席も、センターフライに倒れたが、6回走者無しの第3打席に右中間を深々と破り、ツーバウントでフェンスに当たる二塁打を放った。
「何かをしなければならないと自分に言い聞かせたんだ。神様がチャンスを与えてくれて、二塁打を打つことができた」
大谷とアラエスの首位打者争いを見守っていたパドレスベンチは大きく盛り上がり、2年連続の200本安打も達成して、打率.314に上げたアラエスは、その裏の守りからベンチへ下がった。