初のタイトル挑戦を前に俳優デビューする那須川天心にSNSで「そんな時間があるなら練習しろ!」の声…天心のアンサーは?そしてベルト奪取のカギ「見えないパンチ」とは?
前回に続きスパー相手としてメキシコから来日したメディナが、その進化を一番感じ取っていた。
「スピードとパンチ力が前回来たときよりも凄く上がっている。パンチの精度と角度もレベルアップした。そして何よりよくなったのは距離感。もともとロングレンジは得意だったが、ショートレンジも良くなった。パンチを当てるのが難しくなった。打とうと思うと、動いているので、こちらがパンチを出しにくい」
天心の言う相手の手が出なくなる“マジック”の正体がこれだ。
天心の心に響くラブコールがあった。
9月3日に比嘉大吾(志成)との死闘を3-0判定で乗り越えた元K-1王者でWBO世界同級王者の武居が、試合後にリング上から、「天心君。10月の試合、頑張ってください」と突然呼びかけたのだ。天心は、観戦に訪れてはいなかったが、事実上の王者からの挑戦者指名だった。
「ファンの方から天心戦を見たいとの声が大きい。ボクシングに転向する前からずっとやりたかった相手なので軽く名前を出させてもらった」
武居はそう天心の名前を出した理由を明かしていた。
日本プロボクシング協会の内規では、無謀な世界戦の乱発を禁じるために地域タイトルの獲得が世界戦の条件とされている。
天心は「タイトルは意識は何もしていない。世界をとるための切符というか、手段でしかない。おまけ、(マクドナルドの)ハッピーセットのイメージ」と言うが、初のタイトルを手にした時点で武居へ挑戦するための障害はなくなる。
それでも天心は慎重にアンサーを返した。
「チャンピオンから言ってくれる。たぶん前回僕がああいう勝ち方をしていなかったら言われなかったと思う。(武居戦)の時期が近づいていると思う反面。まだ5戦、新鋭賞をもらったばかりの新人なんで。トランキーロ(スペイン語で、焦るな)。待って下さい。気長にいきたい。まだまだ強くなるので。ちょっと待って下さいっていうのがある」
本田明彦会長は、当初「世界挑戦まで10戦」という青写真を描いていた。だが、前戦の試合後に「少し早まるかもしれない。来年終盤か」と計画の前倒しを示唆していた。それでも来年終盤に武居へ挑戦するなら、まだ2試合は前哨戦を挟むことができる。天心が「ちょっと待って!」と言うのは「世界王者になることだけがゴールではない」との考えがあるからだ。
その意味でも今回は絶対に負けられない初の地域タイトル戦となる。