人気女性ジョッキー藤田菜七子の電撃引退を招いたJRAの“落ち度”と曖昧ルール…なぜ昨年5月の厳重注意を公表しなかったのか…「施行規定上の処分ではない」の説明も残る“隠蔽疑惑”
日本中央競馬会(JRA)は11日、人気女性ジョッキー藤田菜七子騎手(27、美浦・根本康広厩舎)の騎手免許の取消申請を受理したことを発表、これにより現役引退が決定した。藤田はスマートフォンの不適切な使用が判明し騎乗停止処分を受けていた。問題は昨年5月の申告を巡って両者の言い分が食い違っている点と、厳重注意を与えていた事実をJRAが公表しなかった点。「施行規程上の処分ではない」との説明がされたが、スターの藤田をかばって隠蔽した疑惑も否定できず、スマホの不適切使用は、言語道断ではあるが、何とも後味の悪い幕引きとなった。
JRA通算166勝をあげた女性ジョッキーのパイオニア的存在の藤田の電撃引退が正式に決定した。規則に反するスマホの不適切使用は言語道断だが、JRAの曖昧なルールやスターへの忖度があったとしか思えない“隠蔽疑惑”が悲劇を生んだと言っていい。JRAの説明では納得しかねる矛盾点が露呈したのだ。
10日発売の週刊文春によって藤田が2023年4月ごろまで複数回にわたって調整ルームの居室内にスマートフォンを持ち込み3人以上の外部の人間と通信していたことが報道された。
文春は日付の入ったLINEのやりとりを入手したようで、通信相手である3人の30代男性を直撃して裏もとっていた。そのうちの一人のコメントには「(交際していた頃は)」と追加説明された記述があり、SNSでは「通信相手は今年7月に入籍したJRA職員の夫なのではないか?」の臆測も飛んだ。事前に報道が出ることを知ったJRAが9日に藤田を事情聴取し、JRA職員の夫ではない「3人の厩舎関係者」と「通信」していたことを認めたことで、11日から裁定委員会の議定があるまでの期間の騎乗停止処分が決定して、本人に通告された。藤田は、そこで電撃引退を決断し、騎手免許の取り消し、つまり引退届を提出した。
だが、この時点では、JRAは、昨年5月に藤田からスマホの不正使用の申告があり、すでに厳重注意を与えていた案件であることを伏せていた。
一方、藤田の師匠でもある根本康広調教師(68)は11日の早朝に会見を開き「ご迷惑をおかけしてすみません」と頭を下げ、「本来は菜七子と一緒にお話しすべきですが、そういう精神状態ではないので」と話し、こう反論した。
「女性騎手ら6人の処分があった際に、本人は自分もそういうこと(スマホの不正使用)があったと申告して厳重注意を受けた、と言っている。にもかかわらず、もう一度処分というのは違うのでは」と愛弟子の思いを代弁。二重処分ではないかとの認識を示した。
さらに引退届を提出するにあたって「大泣きしながら俺の万年筆で引退届を書いた姿は忘れられない。これでは菜七子が逃げたような印象になるけど、決して違うし、そんなズルい人間ではない。そこだけはハッキリ言っておきたい」と切実な思いを口にした。
根本調教師が明かしたのは、昨年5月に今村聖奈、永島まなみら若手の男女6人の騎手がスマホの持ち込みと不適切な使用が発覚して30日間の騎乗停止処分を受けたが、その際に藤田も厳重注意を受けていたというこれまで表に出ていなかった事実だ。JRAはなぜか藤田への厳重注意を秘匿していたのだ。これが事実であれば、根本調教師が主張するように文春砲の反響を配慮しての二重処分となる。