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判定結果を聞いた瞬間に新王者となった堤が飛び上がり拓真は負けを認めた(写真・山口裕朗)
判定結果を聞いた瞬間に新王者となった堤が飛び上がり拓真は負けを認めた(写真・山口裕朗)

「これでダウンを取るんですか?」なぜ井上拓真は堤聖也に敗れ王座陥落したのか…猛抗議の10回“微妙”ロープダウンと12年の歳月が生んだ無骨な手数…再戦可能性も

 結果的に「8-10」と採点されたこのラウンドが「9-10」なら一人がドロー。それでも後の2人の堤勝利の判定結果は変わらなかったが、試合の趨勢を決めるジャッジとなったことも確か。
 試合後、大橋会長は「どっちが勝った負けたは置いといて、ダウンを取られるのはどうかとクレームをつけた。スリップダウンだと思う。勢い余って(ロープに体を預けるように)なっただけでダウンじゃない。武居(比嘉大吾戦)のときもそう。ダウンがスリップになったり、スリップがダウンになったり、違和感を感じる」との不満を露わにした。
 この問題に関するJBCの見解はこうだ。
「ロープがなければダウンしていたというレフェリーの判断。映像によるインスタントリプレーを導入していない以上、レフェリーの判断が最優先で、10ラウンド終了後、ジャッジ3人にも確認をしたが、パンチも効いていたしレフェリーの判断を支持した。そのあと映像でも確認したが、著しく不合理のある判断ではない」
  
 その10ラウンドの終わりに真吾トレーナーが大声で拓真を叱咤した。
「何やってんだ!気持ちを見せろ」
 井上尚弥も「徹底しろ!」と叫んだ。
 だが、最後までパンチを出し続けたのは堤の方だった。
 最終ラウンドの採点でジャッジの3人が堤を支持したのが象徴的だった。
 プロ6年目、14戦目にして無敗のまま初の世界挑戦で栄冠を手にした。
 試合後の会見で拓真の敗戦の弁を伝え聞いた堤は「そうは感じなかった。こっちが弱気になっているんじゃないか、とずっと怖かった」と返した。気持ちの差を生み出したのは、12年前のインターハイの準決勝で敗れた悔しさをずっと忘れなかった堤の無骨なまでのメンタルと努力、そして背負うものの違いだったのかもしれない。
「拓真がいなかったらプロに来ていない。高校生のときから拓真のことを考えていた。リベンジしたいと。拓真からすれば、インターハイで一回試合をしただけの、それ以上でもそれ以下でもない印象のない選手。こっちが片思いをしていただけ。追いかけて、追いかけて、追いついて超えることができた。本当最高ですね」
 そして昨年の12月24日にここ有明アリーナで起きた悲劇。堤が「井上尚弥4団体統一記念・バンタム級モンスタートーナメント」の決勝を兼ねた日本バンタム級タイトルマッチで対戦した穴口一輝さんがリング禍で帰らぬ人となった。年間最高試合にも選ばれたこのトーナメントの優勝が今回の世界戦のパスポートだった。

 

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