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9ラウンドに天心がダウンを奪う(写真・山口裕朗)
9ラウンドに天心がダウンを奪う(写真・山口裕朗)

「こっちはいつでもいい」初のタイトルを奪取した那須川天心に名指しされたWBO王者の武居由樹はどう見た?…敗れたアシロは「IBF世界王者よりスピードは上」と証言

 

 天心は「KOしたかった」と悔しさを見せた。
しかし、リスクを犯すことなく攻めの姿勢を続けて自分のペースを守りきった。世界ランカーのジョナサン:ロドリゲスを「流れの中」で3回TKOに沈めて覚醒した7月の前戦に続き、天心の進化は止まらない、“大人の天心”とも言えるボクシングで転向5戦目にして地域タイトルを手にしたのである。初のバンタム級ウエイトで試合をやり、初めて10ラウンドをフルに戦いきった。「収穫は多かった。スタミナに問題はなかった。もう1試合できる」と放言するほどだった。
 キャリア初黒星を喫したアシロは、「ベストは尽くしたが、天心が素晴らしいパフォーマンスを見せたと思う。ボクシングが上手かった。それにスピードがあり、パンチも強かった」と、その強さを認めた。
 特に「左のストレートに効かされた」という。
 担当トレーナーは「上下を打ち分けるという入念なプランを実行してきた」と、天心のクレバーさに脱帽した。アシロは、会場にいたIBF世界同級王者の西田のスパー相手を今年4月に務めた。西田がエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)へ挑戦する前だ。アシロは西田と天心の比較を質問され「スパーと試合では使用グローブが違うので単純比較はできない」とした上で「スピードは天心が上。テクニックは同じくらい」と証言した。
 西田は、そのロドリゲス戦では異例のインファイトを仕掛けてベルトを奪取したが、そもそもはスピードと出入りが武器のサウスポー。そこを天心が上回るというのだから、もはや世界レベルにあると言っていいのだろうか。
 日本プロボクシング協会は、安易な世界戦の乱発を避けるため世界挑戦の資格として地域タイトルの取得を義務づけている。すでにWBC、WBAの同級3位にランクインされている天心は、これでいつでも世界に挑戦できることになる。
 リング上では「来年は那須川天心対世界をやりたい。もっと強くなってチャンピオンになる」と宣言し、そして、最前列に座っていた元K-1王者でWBO世界同級王者の武居に「勝ちましたよ、武居君」と呼びかけた。
「この前のお返し。来てもらったので報告だけさせてもらった」
 武居は、9月2日の比嘉大吾(志成)との防衛戦に勝利するとリング上から「天心君。10月の試合を頑張って下さい」と事実上の挑戦者指名を行っていた。
 だが、天心は試合前の時点では「(武居戦)の時期が近づいていると思う反面、まだ5戦、ちょっと待って下さいというのがある」と返答していた。
 世界挑戦権を奪い取った、この日は、若干ニュアンスが変わっていた。
「来年じゃないですか。でもすぐじゃない。あせるつもりはない。1、2戦か、段階を経て、そこから挑戦したい。いつでもいける準備はできている」
 一方の武居は天心に名前を出されて笑っていた。
「相手はやりにくい選手だったと思うが、改めて早いし上手いし強い選手だなと感じた。10ラウンドを戦い疲れている感じもなかった。ボクシングに順応している」
 そう称えた上で対戦の可能性についてこう語った。
「だんだん実現に近づいているというのを感じる。僕自身はいつでもいい」
 挑戦する側の天心が来年終盤に対戦することを想定しているのなら武居は、少なくとも2度は、防衛に成功してベルトを保持しておく必要がある。
「今の地位を意地していかねばならない。大変な世界ですが、頑張っていきたい」

 

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