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酷暑の中で開催された箱根駅伝の予選会で異変(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
酷暑の中で開催された箱根駅伝の予選会で異変(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

異常事態?!「熱痙攣が起きて意識がない状態に」箱根駅伝予選会で“名門”東海大が落選する悲劇はなぜ起きたのか…熱中症で10番目の選手がゴール直前で途中棄権

 

 一方で今回の条件を〝追い風〟にしたチームがある。その筆頭が専大だろう。前回18位、参加資格の上位10人10000m平均タイムは15位(29分19秒54)ながら、総合10時間53分39秒で2位通過を果たしたのだ。
 長谷川淳監督は、「暑さで波乱が起きると思っていましたが、2位通過は正直、驚いています」と笑みを浮かべるも、快走の裏には徹底した暑さ対策と、巧みなレース戦略があった。スタートラインに並ぶ直前まで選手たちは氷をつかって体をクーリングしていた。
「暑くなるのは1週間前からわかっていたので、氷を買い足して、相当数持ってきたんです。首から下をギリギリまで冷やしました。同じことをやっているチームもありますが、うちが一番、氷の量が多かったんじゃないですか。それでだいぶ違ったと思います」(長谷川監督)
 前回は順位をうまく把握できなったのが落選につながったこともあり、今回は順位を意識しながら、後半勝負のレース戦略を組んできた。
「うちは速く入る方なんですけど、今年はいつもより遅く入ったので、その分、後半は余裕度が出たんじゃないでしょうか。暑くて後半は気温がさらに上がってくると思ったので、最初の5㎞は10秒、20秒遅くても関係ない。前半は無理をさせずに、後半勝負を徹底させました」
 3人はフリーで残り9人が集団走を実施。設定ペースは5㎞「15分20秒」だったが、選手の判断で少し落として、集団走のグループは5㎞を15分33秒で通過。その後もさほどペースを落とすことなく突き進んだ。専大は10㎞通過時9位から、15㎞通過時で5位、最後は2位まで浮上した。
 9時30分で23.2度だった気温は10時00分に24.2度まで上昇。選手たちが続々とゴールする10時30分過ぎには25度近くになっていたはずだ。さらに日差しも強くなっていた。
 取材していても「暑い」と感じたが、指揮官として33年目を迎える中央学大・川崎勇二監督は、「こんなに暑くなったのは第75回大会(99年)以来です」と苦笑いしていた。

 中央学大はエース吉田礼志(4年)が1時間03分29秒で日本人トップ(10位)を飾り、チームも10時間56分01秒の5位で通過した。暑さを考慮して、集団走のペースを落としたが、それでもきつかったという。
「ペースを下げても後半は行けなかったので、もっと落としても良かったです。テレビ中継ありきでやっている部分もあると思うんですけど、これだけの暑さですから、事故が起きたら大変です。箱根駅伝と同じ8時スタートにすればだいぶ違うと思いますけど」(川崎監督)
 アスリートファーストの視点で、箱根駅伝予選会の在り方を考える時期が来たのかもしれない。
(文責・酒井政人/スポーツライター)

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