「横浜DeNAは最善の防御を怠った」セーフティースクイズ&1秒40の隙を突く重盗を仕掛けた巨人の阿部采配と危険な“綻び”を見せた三浦野球
セ・リーグのクライマックスシリーズファイナルステージ第4戦が19日、東京ドームで行われ、3連敗で後のなかった巨人が4-1で横浜DeNAを下して対戦成績をアドバンテージの1勝を合わせて2勝3敗とした。巨人は7回にスクイズで勝ち越し点を奪い、さらに重盗でチャンスを広げて横浜DeNAの守備のミスを誘い4-1と突き放した。隙を突いて積極的に仕掛けた阿部慎之助監督(45)の采配が光った一方で、無警戒でスクイズを許し、ここまで堅かった守備のミスが出るなど、横浜DeNAの抱えていた問題点が露呈した。
対オースティン用にケラーを投入
逆襲はベテラン坂本勇人のこの試合2本目のヒットから始まった。1-1で迎えた7回だ。一死からジャクソンの強いストレートに対応しようと右手と左手の間をあけてバットを持っていた坂本がチェンジアップをレフト前へ弾き返した。続く中山は、左脇の肋骨を骨折した吉川に代わって二塁を任されて3試合目。ここまで1本のヒットもない。通常ならバントだ。だが、阿部監督は強攻させた。
中山の一打が一、二塁間を破る。
ベンチにはその吉川が入っていた。中山にも何か思いがあったのだろう。
一塁走者の坂本は躊躇することなくセカンドベースを蹴った。三塁へ魂のヘッドスライディング。坂本は、2012年の中日とのCSファイナルで3連敗のあと、3連勝で、逆転の日本シリーズ出場決めたチームで3番を打っていた。崖っぷちを知るベテランが、好走塁でチャンスを広げた。
ここで阿部監督が動く。三塁走者の坂本ではなく、一塁走者の中山を増田に変えたのだ。これもすべての布石。スクイズのある場面でバッテリーの意識を三塁走者ではなく一塁走者へ向けさせた。
初球だった。
「何とかしてどんな形でも1点取りにいこうという気持ちで打席に入った」という岸田が、投手の右へ絶妙のバントを転がした。ジャクソンがバックトスでバックホームしたが、坂本のスタートが早かった。左手を伸ばしてホームへまた頭から滑り込んだ。戸柱の追いタッチは間に合わなかった。
「セーフティースクイズだったんですけど(坂本)勇人さんが良い走塁をしてくれてよかった」とは岸田のコメント。
セ・リーグでタイトル獲得経験のある評論家の一人は「横浜DeNAのバッテリーに防ごうとする意識が薄かった」と指摘した。
「セーフティースクイズは何も100%成功する作戦じゃない。戸柱は体をホームベースから外して外へ構えていた。おそらく外のボール球で様子を見るつもりだったのかもしれないが、中途半端だった。ストライクゾーンにストレートを投げれば打者はバントをコントロールしやすい。しっかりと1球外すべきだったし、打者がバントにてこずるボールで配球すべきだった。最善の防御ができていなかった。こういう細かい野球のできない点が横浜DeNAの弱点。大事なところでやるべきことをやらずに勝ち越し点を献上した」
さらに阿部監督が仕掛けた。
代打・長野をコール。対する横浜DeNAは前日に2イニングを投げていたサブマリンの中川をマウンドに送ったが、その1球目に、なんと増田と岸田がダブルスチールを成功させたのだ。二塁走者の増田は完全にフォームを盗んでいた。まったく無警戒だった戸柱は、三塁へ送球さえできなかった。一塁の時点で代走が送られていて、スクイズを簡単に許してしまったことも手伝い、戸柱にも余裕がなかったのかもしれない。マウンドに上がったばかりの中川も打者に集中していた。一塁走者の岸田もよく増田のスタートについていった。