「三浦監督の作戦には臨機応変さがなかった」何が逆王手をかけた巨人と横浜DeNAの明暗を分けたのか…守り切った阿部野球と勝負手を打てなかった“番長”采配
セ・リーグのクライマックスシリーズファイナルシリーズ第5戦が20日、東京ドームで行われ、巨人が1-0で横浜DeNAを下してアドバンテージの1勝を含めて対戦成績を3勝3敗に戻して逆王手をかけた。巨人は山崎伊織(26)、高梨雄平(32)、アルベルト・バルドナード(31)、大勢(25)の4投手が完封リレーで中山礼都(22)が5回に放った値千金の一発を守り切った。
中山のプロ1号が決勝点
東京ドームで22歳のセカンドベースマンが絶叫した。
「最高でーす」
阿部監督が現役時代に始めたお立ち台での決まり文句。
0-0で迎えた5回。先頭の中山が、横浜DeNAの好投の濵口から代わった山崎が投じた147キロの“逆球”を見逃さずライトスタンドへ運んだ。レギュラーシーズンでも本塁打を打ったことのないプロ4年目の男が崖っぷちの第5戦でプロ1号。左肋骨骨折で欠場の続く吉川の代役として第2戦からセカンドを任された中山が見事にその期待に応えた。結果的に、この1点が決勝点となった。
巨人は「守り勝った」と言っていい。
1点のリードを迎えた7回。一死から桑原のレフトを襲う打球を突っ込んできたオコエがバウンドを合わせることができずに後逸、三塁への進塁を許してしまった。記録は三塁打となったが、やってはならない大チョンボで、左打者の森敬斗を打席に迎えた。阿部監督は、ここまで無失点の山崎から左腕の高梨にスイッチした。
当然、巨人は前進守備。ショートの門脇は「絶対(自分の所に打球が)飛んでくるなと思っていた」という。だが、そういう選手のところに打球が飛ぶのが“野球あるある”。森敬斗の詰まった打球が門脇の右を襲う。
半身になって、この打球をキャッチした門脇は、体を反転させてバックホーム。送球は、少し三塁側に逸れたが、ちょうどそこに桑原が頭から滑り込んできてアウトとなった。横浜DeNAベンチのサインは「ゴロゴー」。桑原のスタートを悪くなかった。それを上回る門脇の超ファインプレーだ。
「(実際打球が飛んできたときは)いらっしゃいという感じだった。必死でピッチャーを助けたいという一心で9回ずっと守り続けている。アウトにできてよかった」
試合後、お立ち台に呼ばれた門脇のコメントだ。
さらに横浜DeNAは、戸柱の打席の初球に一塁に残った森敬斗に二塁を狙わせたが、これも巨人バッテリーは読んでいた。ボールは変化球だったが、岸田がストライク送球。余裕のタイミングでアウトにして横浜DeNAの反撃の芽を摘んだ。
セ・リーグの野球に詳しい評論家の一人は、「森に代打はなかったか」と、動かなかった横浜DeNAベンチの采配に疑問符をつけた。
森敬斗はレギュラシーズンで対右腕に打率.260、対左腕は打率.233。しかも高梨には2打数ノーヒットだったが、横浜DeNAベンチは代打策を取らなかった。
「横浜DeNAのベンチにいた右打者は蝦名、松尾、東妻の3人。三浦監督は、左対左をあまり気にしない傾向にあることから、筒香という勝負手もあった。三塁走者に背を向ける左投手だったことから、スクイズ、あるいは、セーフティスクイズなどの選択肢を広げるなら、森をそのまま打たせたことは間違いではなかったのだろうが、何もしないのであれば、ここで流れを変えるアクションが必要だったと思う」