「若手の成長は見えたが“下剋上”許すは恥。リーグ優勝の価値も下がる」巨人大物OBが横浜DeNAに敗れて日本シリーズ進出を逃した“古巣”に苦言
初回にスコアボードに刻んだ先取点は、相手の森の送球ミス。4回には一死一、三塁から戸郷のスリーバントセーフティースクイズで2点目を追加したが、またしてもタイムリーは1本も出なかった。左肋骨骨折で吉川を欠き、打順の再編成を余儀なくされ、特に5番打者は、ヒットさえ1本も打てなかった。横浜DeNAが4番の岡本に対して徹底した申告敬遠で勝負を避けることができたのも5番の不振が理由。坂本、大城、第4戦からは、8月11日に左手首を骨折したヘルナンデスを緊急昇格させて5番に据えたが、誰一人として仕事ができなかった。
「吉川のいる、いないは関係ない。骨折か何か知らないが、彼はいったいこのシリーズで何をしていたんだ?昔の強い巨人はどこに行ったのか。歴代監督の川上哲治さん、水原茂さん、そして巨人をライバルとしていた鶴岡一人さんらは、こんな巨人を見てどう思うのか。『昔の巨人を取り戻せ』。そんな声が聞こえてくる。私もそう思う」
巨人を愛するOBゆえの厳しい叱咤。だが、一方で3連敗の後に2連勝した戦いの中で見せた若手の成長は評価した。
「第5戦でプロ初本塁打を打った中山、守備で貢献した門脇、先発投手も井上、山崎ら、少しだけ若手が出てきた。こういう舞台を経験したことのない若手が全力プレーで持てる力を発揮した。元々巨人にはそういう選手はいるんだ。それを育てることができていなかっただけ。ピッチャーも悪くはない。阿部は、来年に向けて進むべき道は見えたんじゃないか」
吉川に代わって第2戦からセカンドで起用された4年目の中山は、第4戦の7回に勝ち越しにつなげるライト前ヒットを放ち、第5戦ではプロ初本塁打が決勝アーチとなり、この日の第6戦でも2安打をマークした。門脇も守備で貢献。1回に先頭の桑原の三遊間への深いゴロを一塁で刺し、7回には、二死一、二塁から佐野のセンターへ抜けていてもおかしくなかった打球を絶妙のポジションニングから飛び込んでストップ。走者の生還を食い止めた。
一方の投手陣では、崖っぷちの第4戦で先発した左腕の井上が5回までパーフェクト。戸柱に手痛い一発を浴びたが、6回を投げて打たれたヒットはその本塁打の1本だけ。第5戦では山崎が7回途中まで無得点に抑える力投を見せた。
阿部監督は、試合後にミーティングを開き、「優勝した自信は持っていて欲しいし、こういう難しいゲームを勝てなかった悔しさは、必ず来年につなげて欲しい」と選手に呼びかけたという。来季は15勝3敗のエース菅野がメジャー挑戦でいなくなる公算が高い。岡本のポスティングによるメジャー挑戦の噂もある。CS敗退のリベンジを果たす前に、戦力ダウンという窮地を乗り越えて、連覇という難関にチャレンジしなければならない。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)