新生なでしこの初陣も国立に閑古鳥が鳴いた( 写真:長田洋平/アフロスポーツ)
新生なでしこの初陣も国立に閑古鳥が鳴いた( 写真:長田洋平/アフロスポーツ)

なぜ国立がガラガラ?新生なでしこJが韓国に4-0圧勝も集客できず

 

「インターナショナルマッチデーは代表活動がベースになり、実際に海外ではクラブの試合は開催していない。(JFAとWEリーグが)お互いにもっと日程を共有しなければいけなかったと反省している。カップ戦だからいいだろう、とはならない」
 土曜日のデーゲームながら、プロ野球日本シリーズやラグビーのオールブラックス戦など、他競技のビッグイベントと重複した影響もあるなかで逆の見方もできる。
 2021年8月の東京五輪でスウェーデン女子代表に敗れた準々決勝(埼玉スタジアム)を最後に、なでしこは日本国内で9勝1分けと負けていない。そして、先述の北朝鮮戦を除けば、韓国戦の1万2420人は実は最多の観客数だった。
 10試合のなかには、2022年7月の中国女子代表とのEAFF E-1サッカー選手権(県立カシマサッカースタジアム)のように、わずか901人と3桁に落ち込んだ一戦もある。他に1万人を超えた試合は、昨年7月14日のパナマ女子代表戦(ユアテックスタジアム仙台)の1万206人しかないのが現状だ。
 佐々木監督のもとで女子W杯ドイツ大会を制し、一大ブームを巻き起こしたのが2011年7月。翌年のロンドン五輪、2015年の女子W杯カナダ大会でも銀メダルを獲得した後に低迷期に入ったなでしこがいまだ復権への途上にあり、一方で国立競技場のように利便性がよければ1万人超を見込めるとも証明できた。
 韓国戦後は女子委員長の仕事に専念する佐々木氏は言う。
「もっと結果や成果を示さないと、まだまだ反応は鈍い。もっともっと積み上げて、国立競技場で試合をするときには、観客が3万人を超えるくらいのチームにならないといけないと切に思いながら、女子委員長に戻って何とかしなければいけない」
 2031年の女子W杯日本誘致を掲げる宮本会長も、男子のJリーグも巻き込みながら日本の女子サッカー界全体を盛り上げていきたいと青写真を描く。
「これからもいいものを見せつつ、例えばワールドカップやオリンピックで、さらなる高みにいくチームになっていけば、もっと多くの方に見てもらえる。全体を盛りあげていく部分と、結果を出していく強化の部分の両方が大事になってくる」
 韓国戦では20歳の藤野や19歳の谷川ら、今後のなでしこを背負っていくと期待される若手がゴールで共演した。新監督が決まっていない状況下で、今後のなでしこの活動予定も現時点で何も決まっていない。国内外の所属クラブで個々がレベルアップに努めながら、次回の女子W杯への本格的なスタートを切る体制の誕生を待っている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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