なぜ横浜DeNAは2勝2敗のタイに持ちこめたのか…“イラ立ちサイン”封印した先発ケイとソフトバンクが露呈したブルペンの経験不足
だが、ケイー戸柱のバッテリーはレギュラーシーズンとは違う配球を用意していた。投球の約3割を占めるカットボールを4回までは封印した。この間、カットボールが占めた割合は13%。そして5回には、先頭の近藤を追い込んでから裏をかいた153キロのストレートでスイングアウト。ケイは「トバさんのおかげ」と試合後に感謝の言葉を残したが、球界でトップクラスのデータ野球を駆使しているベンチと戸柱の共同作業の成果だった。
一方のソフトバンクは中継ぎの問題を露呈した。
今シリーズにリーグ優勝を支えたチームトップの23ホールド、14セーブ、防御率2.89の松本裕、19ホールド、防御率1.80の藤井皓、そして17ホールド、防御率2.13の津森が、故障などで間に合わなかった。杉山、ヘルナンデス、オスナの勝ちパターンはあるが、ビハインドの展開、あるいは、5、6回に継投が前倒しになった場合に彼らの離脱が響いた。大舞台の経験のない若手に頼らざるをえなくなり、小久保監督は、6回二死一塁で先発の石川に代えて、尾形をオースティンに当て、育成ドラフト1位から7年目にして急成長中の“剛腕”は堂々のストレートで三振に打ち取った。しかし、回跨ぎとなった6回に宮崎に制球をミスして、ど真ん中に投じたストレートをレフトスタンドへ運ばれ、さらに一死満塁のピンチを背負った。小久保監督は、好調の桑原を迎えたところでルーキーの岩井にスイッチしたが経験の少ない新人には荷が重かった。レフトオーバーの2点タイムリー二塁打を打たれ、二死満塁となってからオースティンにレフトへのタイムリーヒットを許した。
ブルペン陣が踏ん張って逆転劇へつなげるというソフトバンクの勝ちパターンがシリーズでは演出できていない。ここからの戦いで不安の残る点だ。
セ・リーグでタイトルを獲得した経験のある評論家は、「シリーズ男」を横浜DeNAの逆襲のキーワードにあげた。
「横浜DeNAには桑原というシリーズ男が出てきた。牧、佐野という逆シリーズ男がいるにもかかわらず、桑原と軸になるオースティンの2人でカバーできている。一方のソフトバンクには、今のところシリーズ男が見当たらない。第2戦で本塁打を含む3安打3打点の活躍をした山川が、そうなるのかと思ったが、福岡に帰っての2戦でバッタリと止まってしまった。また横浜DeNAは、戸柱、森といった下位打線が怖いが、ソフトバンクはいまだにシリーズでヒットのない8番の甲斐がブレーキとなって下位で打線がつながらない。打線は横浜DeNAが上で、不安視されていた先発投手陣に、第3戦で7回を1失点に抑えたエースの東、そしてケイと2人も孝行息子が出てきたのだから、逆襲するのも当然」