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PK戦でYBCルヴァンカップを制した名古屋グランパスの長谷川健太監督が満員の国立で胴上げされた(写真・日刊スポーツ/アフロ)
PK戦でYBCルヴァンカップを制した名古屋グランパスの長谷川健太監督が満員の国立で胴上げされた(写真・日刊スポーツ/アフロ)

なぜ6万人を超える大観衆で埋まった名古屋vs新潟のルヴァン杯決勝が歴史的名勝負となったのか?

 

 優勝をかけたPK戦。3年前に稲垣とともに戴冠している守護神は、身長193cm体重79kgの巨躯をさらに大きく見せて長倉の失敗を誘い、直後には2番手のキッカーとしてゴール左へ正確なキックを完璧に決めて決勝戦のMVPを獲得した。
「この大会で優勝したいとずっと思ってきた。優勝をもって最高の終わり方ができると信じていたし、それを実行できて本当にうれしく思っている」
 MVPとのダブルの喜びに言葉を弾ませたランゲラックは、決勝へ臨むうえでチーム内での合言葉になっていた「ミッチ(ランゲラックの愛称)のために」に対する思いを問われると「正直、心地よくないものだった」と苦笑いを浮かべている。
「自分に対してではなく、サポーターを含めたクラブに関わるすべての方々のために、チームの全員が全力で戦うべきだと思っていたので」
 試合後の公式会見。ガンバ大阪、FC東京に続いて指揮官として3度目の大会制覇となった長谷川監督が、胸中に秘めてきた本音を打ち明けた。
「10月以降はほぼルヴァンカップ制覇にかけてきました。本来はそうであってはいけないとわかっていますが、それでもこの大会を重視して戦ってきました」
 あと一歩届かなかった新潟の松橋監督も、他のチームとは一線を画す独自のスタイルを標榜し続ける決意を新たにしながら、サポーターへ感謝の思いを届けている。
「苦しいときを含めて、どんなときでもわれわれを見捨てずに後押ししてきてくれた方々に、少しはいい景色を見せられたのかな、と思う。今日は下を向くかもしれないけど、明日からはしっかりと前を向いて次への準備を進めていきたい」
 キックオフ前から大観衆が予想された雨中の大一番を、両チームに力強く脈打つ哲学と戦術の応酬がさらにヒートアップさせた。そして、もうひとつ。延長戦を含めた120分間の死闘でカードが1枚も提示されなかった、熱さと激しさのなかでもフェアプレー精神を最後まで貫いた選手たちの姿が、歴史的な名勝負を生み出していた。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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