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横浜DeNAの桑原がシリーズMVPを獲得した(資料写真・黒田史夫)
横浜DeNAの桑原がシリーズMVPを獲得した(資料写真・黒田史夫)

何が明暗を?なぜ横浜DeNAは26年ぶり“下剋上日本一”を手にできたのか…「ポテンシャルを引きだした“男泣き”三浦監督と圧勝Vのジレンマに苦しんだソフトバンク」

  

 桑原は3月29日の広島との開幕戦ではスタメンから外れていた。1番はルーキーの度会でセンターを守ったのは梶原。今季レギュラーシーズンでセンターでのスタメン出場は66試合に留まり、1番を打ったのは、わずか26試合だった。その中で三浦監督は、梶原が不調だったこともあり、巨人とのCSファイナルステージの第6戦から桑原を1番に抜擢した。そして日本シリーズでは、全試合で1番を打ち、打率.444、1本塁打、9打点で、満場一致のMVPである。
 連敗した第2戦の試合後に主将の牧が選手だけの緊急ミーティングを開き、2017年の日本シリーズを経験している桑原にスピーチを依頼した。
 そこで桑原は「負けて悔しくないんか?」と呼びかけてチームを奮起させたと報道された。それが福岡での3連勝につながったと、伝説化してきたが、日本一を決めたお立ち台で、そのやりとりを訂正した。
 TBS系列の中継が、桑原の“MVPインタビューの途中で終了となったが、そのテレビ画面からヒーローの姿が消えた後にこう明かしたのだ。
「ミーティングで『悔しくないんか』とは言ってなくて『ソフトバンクさんに全員でホント気持ちを前面に出して立ち向かっていこう』という話をさせてもらったんです」
 桑原は「もちろん2連敗してみんなに悔しい思いがあったと思いますし、ひとつになって良い試合できたと思います」と続けた。
 阪神とのCSファーストステージの第1戦で左足を肉離れしていた故障明けのエースの東が第3戦で流れを止め、第4戦のケイも7回無失点で、それを勢いに変え、第3戦のジャクソンが7回無失点でつなぎ、勢いを揺るがないものにした。
 一方のソフトバンクは第3戦から別のチームになってしまった。
 池田氏は「圧倒的な形でリーグ優勝を果たしたソフトバンクは、対照的に本来の力を出せなかった。流れに飲み込まれ、それが焦りに変わり、崖っぷちに追い込まれて自滅した。これが短期決戦の怖さ、山川は3戦目から、甲斐は全試合でノーヒット。打線が分散されてつながらなかった。5月に大怪我を負って約4か月も戦列を離れていた柳田は万全ではなかった。シーズンでは見たことがない打線の大スランプを脱出するには、人を変えるのが最善手だが、救世主的な選手はいなかったし、メンバーの実績を考えると起用した以上その形を変えることができなかった。レギュラーシーズンで貯金42を作ったチームゆえのジレンマだった。そこが思い切った起用のできた下剋上チームとの差だったのかもしれない」
 横浜スタジアムの周辺には、入れなかったファンがあふれ、そこらかしこでビールかけが始まっていた。

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