なぜ2年前にJ2転落危機にあったヴィッセル神戸は黄金期を迎えているのか…ガンバ大阪との天皇杯を制し3大タイトル独占の可能性
ビッグマネーの投入を惜しまず、大型補強の旗振り役を担ってきた神戸の三木谷浩史会長(59)は、5大会ぶり2度目の天皇杯制覇に「以前は興奮するだけでしたけど、地力もついた今回は充実感があります」と笑顔を浮かべながら、イニエスタが健在だったこととは対照的なチームを作り上げている吉田監督にこう言及した。
「頑張っていますね。高く評価しています」
もちろん、今シーズンの戦いはまだ終わらない。
秋春制で開催されているAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)は、折り返しを迎えたリーグステージEASTで3勝1分けの無敗で首位に立つ。次なる目標のアジア制覇へ向けて、年内にあと2試合が予定されている。
そして残り2試合となったリーグ戦では、2位のサンフレッチェ広島に勝ち点3差をつけて首位をキープ。柏レイソルのホームに乗り込む30日の次節で勝利すれば、3位で追うFC町田ゼルビアが優勝する可能性が消滅し、翌12月1日に北海道コンサドーレ札幌と対戦する広島が引き分け以下ならば、1試合を残して優勝が決まる。
今シーズンは5位以内を長くキープするなど、上位勢につかず離れずの状態から、夏場に入って怒涛の6連勝をマーク。追う側の強さを存分に見せつけ、現在3連敗を喫している広島に代わって、今月に入って首位に返り咲いた。
その後も勝ち点差をじわじわと広げるリーグ戦の軌跡を酒井はこう語る。
「いい内容を伴いながら、勝利をおさめている試合もたくさんある。何よりもまず勝利を見すえた先へ、どのようなプロセスで進んでいけばいいのかを、チーム全員でさまざまな形で表現できるチームになってきていると思う」
J1連覇を達成すれば、2020、21シーズンの川崎に続く歴代で延べ8チーム目。そのときには2017シーズン以降の6年間で優勝を分け合った、川崎とも横浜F・マリノスとも一線を画す質実剛健なサッカーが、黄金時代を手繰り寄せることを意味する。
(文責・藤江直人/スポーツライター)