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ファジアーノ岡山が悲願のJ1昇格を決めた(ファジアーノ岡山スタッフ公式Xより)
ファジアーノ岡山が悲願のJ1昇格を決めた(ファジアーノ岡山スタッフ公式Xより)

なぜファジアーノ岡山は“J1空白県”の歴史を塗り替えることができたのか…「守らせたら天下一品」磨きあげた堅守速攻スタイル

 

 同シーズンが岡山の指揮を執って1年目だった木山隆之監督(52)は、必ず捲土重来を期す決意を固めたと決勝前日のオンライン会見で明かしている。
「3位に入った2年前はすごく大きな期待を感じていましたけど、自分自身はまだどこかが足りたいという気持ちを抱きながら、山形さんと戦っていたのを覚えている。あの敗戦からJ1昇格だけを見すえてきたし、当時とは心境も大きく違っている」
 弾きだされた答えが堅守速攻にさらに磨きをかける作業だった。オフに竹内、東京五輪ドイツ代表のGKスベンド・ブローダーセン(27、前・横浜FC)ら13人を補強したフロントは、夏場にもFW一美和成(27、前・京都サンガF.C.)やMF神谷優太(27、前・江南FC)らJ1経験者を獲得して選手層に厚みをもたせた。
 そして、3シーズン目を迎えた木山体制で、岡山が先制すれば負けない“神話”が生まれる。栃木SCに快勝した2月の開幕戦でスタートしたそれは、リーグ戦で15勝3分けと18試合連続をマーク。そのなかにはPO決勝で対戦した仙台に、敵地・ユアテックスタジアム仙台で4-1、ホームでも2-0で連勝した試合も含まれている。
 J2リーグで2番目に少ない29失点の堅守を完成させ、4位の山形のホームに乗り込んだ1日の準決勝でも3-0で快勝。下剋上を果たした岡山は、同じく3位のV・ファーレン長崎を倒して勝ち上がってきた仙台との決勝でも先制する。
 左サイドで仕掛けた前半20分の波状攻撃から、最後はMF末吉塁(28)がペナルティーエリア内の左角あたりから右足を振り抜く。ヒーローとなった試合後に「実はあれ、クロスでした」と照れくさそうに打ち明けたボールは、美しい弧を描きながら反対側のゴールネットを揺らした。仙台の守護神・林彰洋(37)がほとんど動けない一撃だった。
 満員の1万4673人で埋まった、シティライトスタジアムが熱狂する光景とともに不敗神話も幕を開ける。後半16分にはカウンターからMF本山遙(25)に追加点を奪われて敗れた一戦を、仙台の森山佳郎監督(57)もこう振り返った。
「組みにくい相手というか、ただでさえ3バックでこちらとかみ合わないうえに、かみ合わせようとすると長いボールを蹴ってくるし、さらに前線で収められる選手もいるし、収まった瞬間に迫力のある2列目の選手が飛び出してくる。何だかんだいっても失点が少ない岡山さんは、守らせたら本当に天下一品なので、特にアタッキングサードの局面を崩すには、われわれのクオリティーと迫力が足りなかった」

 

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