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ヴィッセル神戸のMF武藤嘉紀が初のMVPを受賞した
ヴィッセル神戸のMF武藤嘉紀が初のMVPを受賞した

ヴィッセル神戸MF武藤嘉紀のMVP秘話…「パパ、東京のチームに来れないの?」最愛の家族からの1本の電話

 

 結果として体脂肪率はシーズンを通して9%前後で推移した。武藤が続ける。
「僕たちサッカー選手は体脂肪率が低すぎても逆によくなくて、風邪などを引きやすくなる。僕の場合はさらに扁桃腺が弱くて、熱も出しやすい体質なので、感覚的にはベストとされる10%を常に切ってきた、という感じですね」
 FC東京や代表ではフォワードだった主戦場が、神戸では右サイドハーフに変わった。ベストのパフォーマンスを求めて、体作りも根本的に変えたと振り返る。
「体を張って、相手を背負いながら前へ進んでいくフォワードに対して、サイドハーフにはドリブルも求められるし、もちろん守備でも上下動しなければいけない。体を重くしすぎてもダメなので、よりしなやかな体にするトレーニングも積みました」
 さらに体に疲労がたまってくる夏場には、あえて体重を1.5kgほど落とした。
「筋肉にも重さがあるので、どうしても関節に負荷がかかる。膝をちょっと痛めた時期でもあるし、ノエビアスタジアム神戸のピッチ下の状態が股関節周りなどにもかなり影響を与えるので、怪我のリスクを避ける意味を込めました。その意味でサイドハーフでの13ゴールはできすぎというか、たまには自分を褒めてあげてもいいのかな、と」
 ヨーロッパでの苦い経験も、怪我に強く、無理もきく体を作りあげた。たとえば自身のゴールで勝利した4月の湘南ベルマーレ戦で、武藤は試合中に肋骨を骨折しながらフル出場し、その後も先発に名を連ね続けた。試合中に足がつってもすぐに回復させ、神戸を率いる吉田孝行監督(47)を何度も驚かせた理由を武藤は笑いながら明かす。
「普通の選手は一度足がつったらもうダメらしいんですけど、僕が海外でプレーしていたときには、足がつって交代したら、次はいつチャンスが回ってくるかがわからない。だから、つったとしても隠しながらずっとプレーしているうちに特殊能力がついたというか、つっても何分かしたら復活する、みたいな感じになりました」
 武藤と縦の関係を組むDF酒井高徳(33)は「よっち(武藤の愛称)が敵じゃなくて、つくづくよかった」とアウォーズを前にMVP獲得は当然と語っていた。
「点を取れるのもアシストできるのもそうですけど、なぜそんなに守れるの、というくらいに守ってくれる。あの攻守を同時にできるのは、Jリーグでは彼しかいないといっても過言ではない。しかも32歳になったシーズンに、インテンシティーを落とさずに戦い抜ける。よっち以外に、そんな選手は見当たらないですね」

 

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