• HOME
  • 記事
  • サッカー
  • ヴィッセル神戸MF武藤嘉紀のMVP秘話…「パパ、東京のチームに来れないの?」最愛の家族からの1本の電話
ヴィッセル神戸のMF武藤嘉紀が初のMVPを受賞した
ヴィッセル神戸のMF武藤嘉紀が初のMVPを受賞した

ヴィッセル神戸MF武藤嘉紀のMVP秘話…「パパ、東京のチームに来れないの?」最愛の家族からの1本の電話

 

 ドイツに渡ってすぐに大学時代の同級生と結婚し、一男二女の父親でもある武藤は神戸入りの際に、サッカーに集中したいという思いを込めて単身赴任を選んだ。東京で離れて暮らす最愛の家族の存在も、武藤に別次元の力を与えた。
「家族にはずっとつらい思いをさせてきました。子どもたちの誰か一人が風邪をひいたら僕が東京へ月に一度くらいの割合で帰るのをキャンセルするとか、逆に家族が神戸へ来る予定で一人が風邪をひいたらキャンセルしてもらうとか。腰を痛めるからと抱っこや肩車もしなかったし、授業参観や幼稚園の行事などにも何ひとつ行けなかった。父親として何もしてあげられなかったけど、犠牲にしてきたすべてが報われました」
 今年の9月ごろだったと記憶している。家族と電話で話しているときに、子どもの一人から「パパ、東京のチームに来られないの」と聞かれた。受話器の向こう側から響いてくる無邪気な質問に、武藤自身は大きなショックを受けている。
「子どもたちには本当に寂しい思いをさせちゃっているんだな、と。だからこそ(優勝という)結果を届けてあげたかったし、これからまずやりたいのは家族サービスですね。一緒に旅行へ行って、美味しいものを食べて家族を楽しませたい」
 夫人と3人の子どもたちはアウォーズにも駆けつけ、武藤の晴れ姿をアリーナから見守り、終了後にはMVPのトロフィーを囲んで家族で記念写真にも収まった。武藤自身もスピーチの最後を「このMVPは家族に捧げたい」で締めている。
 今シーズンを大団円で終えた武藤だが、愛する子どもたちも「東京のチームに――」と気にかける、来シーズンの去就は現時点で未定となっている。今シーズン限りで契約が満了を迎える神戸からは、すでに新たな契約のオファーを受けた。寸暇を惜しんで家族との時間を楽しみながら、武藤は新シーズンを戦う自分自身の姿も熟考していく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

関連記事一覧