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辰吉寿以輝は中嶋一輝の左フック一発でキャンバスに沈む(写真・山口裕朗)
辰吉寿以輝は中嶋一輝の左フック一発でキャンバスに沈む(写真・山口裕朗)

「負けてから強くなるのが辰吉やん」なぜ辰吉ジュニアは初のタイトル戦で衝撃の2回失神TKO負けを喫したのか…カリスマの父は再起を促すメッセージを送る

 

2ラウンドに入ると、中嶋が右手を伸ばしてプレスをかけるいつものパターンでじりじりと距離をつめる。辰吉詰まりウスポーに対しての禁じ手である右に動かざるをえなくなり、正面に立つことになった。ガードも無防備。そこに2発、もろに左ストレートをもらった。反応できていなかった。
「ジャブとガードを固めて前に出たときに距離を詰めれた。いけるかなと思った」とは、中嶋の証言。フィニッシュブローには「下(ボディ)を見ながら上を打った。一発は狙っていないが、当たれば倒せると思っていた」との細かい工夫があった。辰吉からすれば死角からパンチが飛び込んできたのだろう。
 父は、冷静に敗因をこう分析した。
「これをしなあかん、あれをしなあかんとせわしかった。相手の(右)足の外に(左)足を置かなあかんとそればかりに固執し動きを見破られた。それ以外のところでパンチ(の種類で)変えていかなあかんかった。でもそれはキャリアがないとできん。それと左が圧倒的に少ない、左を多用したら、(相手も)左のカウンターが打てなくなるんや」
 中嶋の必殺の左を封じるのは左。しかしそれを打てなかった。
 今回はサウスポー対策を徹底的にやってきた。15日に防衛戦を控えるIBF世界バンタム級王者の西田凌佑(六島)、東京の帝拳に出稽古にきて日本バンタム級王者の増田陸とも拳を交えた。内外のトップボクサーとのスパーで、相手の左を防ぐパターンも身につけてきたはずだが、リングでは出せなかった。
「別にサウスポーは苦手じゃない」と、親子揃って頑固に言い張るが、これが苦手意識ということなのだろう。
 父は、その背景に「プレッシャーがあった」とかばう。
「周りのせいにするつもりはないけど、圧力も凄いやん。どうしても(タイトルを)取らなあかんという気持ちが強かった。そっちが先にいってしまったかな」
 父は1990年9月にここ後楽園でプロ4戦目で日本バンタム級王者の岡部繁(セキ)に挑戦し4ラウンドに計3度のダウンを奪うという衝撃のKO勝利でベルトを腰に巻いた。ファンやメディアは、その再現に夢を重ねた。寿以輝も、その時の父のガウンをオマージュしたものを羽織った。それらが、すべて目に見えぬプレッシャーに変わっていたのか。
 吉井会長もこう悪夢の2ラウンドを振り返った。
「チャンピオンはパンチがある。もうすこしもつれこんだらと思ったが、まだまだ辰吉に実力が足りない。それが試合に出た。そこをチャンピオンは見逃さなかった。左を打つタイミングをはかっていたね。とにかく経験不足。辰吉の苦手は追うこと。つめて中央で(戦いを)できれば…中盤くらいに勝負と思っていたが、相手がうまかった。プレッシャーといえば、プレッシャー。動きも堅かった」

 

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