「タイガースに投げる時に情を出さない」阪神から現役ドラフトで横浜DeNA入団の浜地真澄が背番号「52」に込めた思いとは?
チームの日本一を喜びながらも、個人としては悔しさだけが残ったと浜地はいう。
「僕自身、タイガースの日本一に貢献できたという実感がなかったので、優勝トロフィーには触りませんでした。だからこそ、来シーズンはベイスターズで(トロフィーを)掲げるように……掲げられるくらいの成績を残したい」
復活を期した今シーズンも、一軍登板は18試合にとどまった。成績が下降線をたどってきた理由について、浜地は「自分なりの分析がある」とこう続けている。
「どうしてこううなったか、というのは自分で理解しているつもりなので、妥当かなと思っているし、そのなかでもっとやれたという思いもあるし、来年はもっとできるというビジョンもあるので、そのうえでチャレンジしていきたい」
昨シーズンは右肩の不調に悩まされ、夏場には右足に痛みも抱えていた。それが「自分なりの分析」であり、しっかりと治療してきたからこそ自信も蘇らせている。
そこへ高校のひとつ先輩の救援左腕・坂本裕哉(27)や、福岡市立元岡中学の大先輩である右腕・三嶋一輝(34)、昨年の現役ドラフトでロッテから移籍し、中盤戦以降で救援陣の一角を担った佐々木千隼(30)らを擁する横浜DeNAへの移籍が決まった。
「タイガースを離れる寂しさがない、といえば嘘になります。いいときも悪いときもファンの方々には応援していただいたし、チームメイトにも本当にいい選手が多かったので、投げるときには情が出ないように、とは思っています」
敵として阪神打線と対峙するときの心構えに言及した浜地は、リーグ3位から“史上最大の下剋上”を成就させ、26年ぶり3度目の日本一に輝いた横浜DeNAの原動力になった、ハイレベルの救援陣に割り込んでいく決意を新たにした。
「今年の日本一のチームですし、外から見ていてもすごくいいピッチャーがたくさんいました。そこへ入っていくのは本当に大変ですけど、しっかりと競争意識をもってやっていけば必然的にレベルもあがっていくので、しっかりと自分を磨いて、野球人生が終わったときに、移籍がターニングポイントだったと言えるようにしたい」
横浜DeNAと対戦したときに脅威を感じたのは、今シーズンのチーム打率.256とリーグトップを、同本塁打が2位の101本を誇った強力打線だけではない。
「甲子園とはまた違って、マウンドに立っていても360度からくる感じの歓声も本当にすごかった。その声援を次は味方として受けられるように頑張っていきたい」
勝負どころの終盤で、横浜スタジアムを揺るがす大声援から力をもらってマウンドにあがり、相手打者を沈黙させる光景を浜地はすでに思い描いている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)