「なぜリスクのある人事をあえてやる必要があるのか」J1福岡の金明輝氏監督就任会見は異例の質疑殺到80分…反発した一部サポーターの理解は得られたのか?
鳥栖を躍進させた2021年のオフに突如退団した金氏に関しては、直後に複数のパワハラ行為をはたらいていた事実が、Jリーグの調査によって判明した。そのなかには鳥栖のU-18監督時代における、当時の高校生に対する行為も含まれていた。
暴言だけでなく暴力も含まれた生々しい実態に、日本サッカー協会(JFA)も金氏に厳罰を科した。最上位の公認指導者ライセンス、S級をひとつ下のA級ジェネラルに降級させたうえで指導者としての活動を1年間停止させ、さらにJFAが定める社会奉仕活動への参加や各種研修への出席も義務づけた。
ただ特に未成年の高校生に対する暴言や暴力は時間がたとうとも看過できない。会見で「過去の行為をしっかりと受け止めています」と反省する姿勢を示した金監督は、被害者への謝罪の有無を問う質問にこう答えた。
「パワハラ被害について(調査委員会に)本人が話したか第三者が話したかは僕自身もわからない。匿名性があるので、個人に対しては謝罪ができていません」
当事者ならばわかるのではないか、とさらに質問が重ねられたときに、川森会長が「すみません。(今日は)釈明会見ではないので」と遮った。
「当時過ちを犯したときにクラブ(鳥栖)を通じて謝罪をしていますし、JリーグとJFAもそのように認識しているとご理解していただけますか」
このようにフォローした川森会長は、金監督へのオファーを一本化するうえで、今シーズンまでヘッドコーチを務めた町田だけでなく、JFAから課された研修プログラムの担当者にもヒアリングを実施。そこで今年2月にS級ライセンスを再取得し、Jクラブを指揮するうえで支障がなくなっていた金氏に最終的に決めたとも明かした。
「研修プログラムに参加された方から、金監督が『リスペクトの気持ちを、死ぬまで心に刻んだ』と語っていたと聞きました。これは一体感を持つという意味で、もしかすると勝利にも勝るものがあると思う。この数年でそういったものが金監督のなかで新たに培われたからこそ、前チームの町田さんでも選手、クラブ、そしてサポーターとの関係性でそれぞれリスペクトが成立したと思っています」
来シーズンの新監督の最有力候補として、金氏の名前が一部スポーツ紙で報じられたのが11月上旬。直後に福岡最大のサポーター団体、ウルトラオブリが緊急声明を発表して白紙展開を要求するなど、SNS上で前代未聞の騒動が巻き起こった。