なぜ日本代表監督を目指す本田圭佑は頑なに日本サッカー協会の指導者ライセンス制度に“ノー”を突きつけるのか?
「そうなれば、名選手たちにはすぐに与えてしまうとか、むしろライセンスがなくても監督をできるようにするとか。いろいろな人に扉が開いたライセンス制度を、僕はいろいろな人と話してきた。みんなもわかっているけれども、ヨーロッパ主導のライセンス制度を変えるのは、いわゆる既得権益になっているので簡単な話ではない。Jリーグだけ変えれば、日本サッカー協会だけ変えればいいという問題ではないので」
現役引退という言葉も引き続き口にしない。
今夏と10月には東南アジアのブータンのパロFCと、1試合限定契約を2度にわたって締結。2ゴールを決めて、日本を皮切りにオランダ、ロシア、イタリアなどに続く通算10カ国目となるトップリーグでのゴールをマークしている。
まもなく迎える新シーズンについて、本田は「オファー自体には困っていないけど」としたうえでこう続けた。
「長くプレーしていないとオファーも途絶えるので、できるだけ早く次の場所を見つけた方がいいと感じている。とはいえ、時期はめちゃくちゃ工夫しないといけない。来年1月から来てくれ、というクラブがいくつかありましたが、全部お断りさせていただいた。そこは僕のスケジュール感に合わせて、いろいろと交渉させてもらっています」
サッカー界の将来を深く考える側面も見せた。
畏敬の念を抱き続けたカズへ自ら連絡を入れて、参加を実現させた全国大会ファイナル後のスペシャルマッチやドリームマッチ。気持ちを高ぶらせた本田は、特に10歳以下と12歳以下の部で優勝した小学生チームへ、手抜きなしのガチンコ勝負で臨むと指示を飛ばし、それぞれ15-0と14-0のスコアで圧勝した。
「僕が子どものころに勝利をプレゼントされても、全然うれしくなかった。本気で上を目指そう、という子どもたちなら、今日の負けをしっかり感じて明日からの練習に生かす。そのほうが明らかに意味のあるものになると思うので」
育成年代の子どもたちの将来をも考えていた本田は、集まってくれた同士たちと全力でコートを駆け抜けた。現役選手と指導者予備軍、さらにはビジネスマンの顔も併せもちながら、誰に何を言われようと、自分が信じた道を突っ走り続けていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)