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井岡一翔の大晦日世界戦が対戦相手のWBA王者のインフル罹患で中止となった(写真・山口裕朗)
井岡一翔の大晦日世界戦が対戦相手のWBA王者のインフル罹患で中止となった(写真・山口裕朗)

井岡一翔の大晦日世界戦中止の裏でファンを裏切ったWBA王者のインフル罹患の隠蔽問題…健康安全を管理するJBCは「理想はもっと早く中止を決断すべきだった」と苦言

 だが、今回の中止に至るプロセスに問題は残った。インフルの罹患を隠蔽していたことだ。マルティネスは20日に来日し、増上寺でのトレーニング風景などをSNSにアップしていたが、26日の公開練習をドタキャンした。
 試合に向けての駆け引きがあるにしろ、その際にカラブレッセ氏は、37.8度の発熱を「微熱」と言い、平熱が「37度」と説明したが、7月の前戦時の前日検診の体温は36.3度で、これは真っ赤な嘘。しかもカラブレッセ氏は「これから病院に行く」と話して、この日に診断結果が出ていたのだが、関係者の間からは「病院には行っていない」という情報が流れた。
 調印式がドタキャンとなった前日には、志成ジムの芳野一貴プロモーターに「なぜ病院に行かなかったのか」と、確認すると「彼らの判断としてそれほどたいしたことはなかったようです」と曖昧な説明をしていた。
 興行のプロモーターである志成ジムサイドも、26日の診断結果をマルティネス陣営と共有しインフル罹患を知っていたが公表しなかった。
 発熱の状況から25日に罹患したとされ、その際の医師の判断は、5日間を過ぎれば、隔離は必要ではなく、体調が戻る可能性があるというもの。王者側も試合出場の強い意思を示し、ギリギリ31日の試合に間に合うとの判断で病状の回復を待った。王者陣営ではアルゼンチンから医師も帯同しており、同じ判断でインフルからのリカバリーの仕方についてもアドバイスを送っていたという。
 インフルを公表しなかった理由は、試合当日には完治している可能性があったことに加え、「公表して逆に騒ぎになるのも…というのもあった。公式行事に(マルティネスが)いかなかったのは皆さん(マスコミに)うつすにも嫌。だからやらなかった」というのが、二宮マネージャーの説明だ。
 しかし、JBCルール第9章103条では「試合に出場することができないボクサー」を定めており、その(三)に「急性・感染症疾患(感冒、ヘルペス、流行性結膜炎など)に罹患している者」とある。インフル罹患者は試合には出られない。
 厚生労働省の公式サイトによると、インフルによる隔離期間を「一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれている。そのためにウイルスを排出している間は外出を控える必要がある」と定めている。さらに学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としている。この定義からいけば25日に発症したマルティネスはアウトだ。
 ただ「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません」とのただし書きがある。今回の医師の診断および、アルゼンチンから帯同した医師の判断は、それに相当すると考えられている。
 ルール上は王者やプロモーターが試合開催を強行しようとしたことに問題はない。しかし、ルールに抵触しかけた問題を公表せず、試合を統括し選手の健康安全を管理する立場にあるJBCにさえ報告を怠っていたことには問題が残る。ファンへの裏切り行為とも言える。

 

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